感情表現

うべなう

水声 著 川上弘美2014/9/30 発行 さびしがるかもしれないと、内心では半分うべなっていたのだ 【諾なう/宜なう】うべなう ・願いや要求を引き受ける。同意する ・服従する ・謝罪する。詫びる

恋々

ヒポクラテスの誓い 著 中山七里2015/5/14 発行 あの男ほど名誉や地位に恋々としない者もいないのではないだろうか 【恋々】れんれん ・未練が強く、思い切れないさま。「地位に―としてすがりつく」 ・恋慕の情を思い切れないこと

盲従

押絵の奇蹟 著 夢野久作 虚無主義者だった。黙々としてコンナ運命に盲従しつつ落ち込んで行った 【盲従】もうじゅう 分別なくひたすら人の言うままになること。「権威に―する」

内意

暢気眼鏡・虫のいろいろ―他十三篇 著 尾崎 一雄昭和8年〜 そういう山口先生の内意を、級友の一人が郷里までつたえに来てくれた 【内意】ないい 心の中で思っていること。また公表してない考え。内々の意向

大息

暢気眼鏡・虫のいろいろ―他十三篇 著 尾崎 一雄昭和8年〜 「へーえ」と大観堂が大息した。私は驚ろきや悲しみではなく、ひどい失望のような 【大息】たいそく 大きなため息をつくこと。嘆くこと

高言

黒髪・別れたる妻に送る手紙 著 近松秋江大正時代 雪岡さんに代わって私が十分に成敗する。」と高言を吐いたじゃないか 【高言】こうげん 偉そうに大きなことを言うこと、その言葉。「―を吐く」

顧慮

或る少女の死まで 他二篇 著 室生犀星 何ら外部から拘束せられることなく、また少しも顧慮しないで衝き進んだことも 【顧慮】こりょ ある事をしっかり考えに入れ、心を配ること。「相手の立場を―する」

哀訴

八軒長屋 著 村上浪六明治39年 まアせっかくここまで探し出して頻りに哀訴歎願するからね、つい已むを得ない義理に 【哀訴】あいそ 同情を引くよう強く嘆き訴えること。哀願 「ひそやかな―も感じさせる(夜の淵をひと廻り)」

天機を洩らす

八軒長屋 著 村上浪六明治39年 まづ当分は天機ここに漏らすべからず、よく相手を見て打ちだすべき秘中の秘策ですよ 【天機を洩らす】てんきをもらす 重大な秘密をもらす

苦杯

機械・春は馬車に乗って 著 横光利一大正13年〜 この胸を刺す諷刺の前で必ず苦杯を舐めているにちがいない 【苦杯】くはい 苦い経験。つらい経験。「―をなめる」「―を喫する」

省慮

煤煙 著 森田草平1910年〜 一時の衝動に依らず、十分なる省慮の結果として、なほ人を殺すに至る 【省慮】せいりょ かえりみてよく考えること

心懐

ヴィヨンの妻 著 太宰治 私は元来、あの美談の偉人の心懐には少しも感服せず、かえって無頼漢どもに 【心懐】しんかい 心に思うこと。意中

酷薄 / 刻薄

合本 三太郎の日記 著 阿部次郎1914年・1915年発行 トルストイは富裕なるイギリス人の刻薄を憤って、彼らによって何の酬いられるところも 【酷薄 / 刻薄】こくはく 残酷で薄情なこと、さま

哀泣

合本 三太郎の日記 著 阿部次郎1914年・1915年発行 いっさいのセンチメンタルなる哀泣と嘆願とを避けて、ただ汝と一つにならむことを 【哀泣】あいきゅう 悲しんで泣くこと

味解

合本 三太郎の日記 著 阿部次郎1914年・1915年発行 たとい真正に愛してくれる人があっても、僕にはその愛を甘受し、味解する資格がない 【味解】みかい じっくり趣を味わい、理解すること

仰望

地上―地に潜むもの 著 島田清次郎1919年発行 平一郎の未知の世界を仰望するような情熱を帯びた眼付をちらちらと横目で見た 【仰望】ぎょうぼう あおぎ望むこと。また敬い慕うこと

知慮 / 智慮

地上―地に潜むもの 著 島田清次郎1919年発行 彼にも分った。しかし自分で制する智慮はまだなかった 【知慮/智慮】ちりょ 賢い考え。物事について深く考える能力

辛労

地上―地に潜むもの 著 島田清次郎1919年発行 凡ゆる忍耐、凡ゆる屈辱、魂と生命の切り売り、その長い辛労の後ではないか 【辛労】しんろう つらい苦労をすること。大変な骨折りをすること

皮相

蒲団・重右衛門の最後 著 田山花袋1907年 1902年 発行 重右衛門のやうな先天的不備なところがある人間には間違つた皮相な観察であつた 【皮相】ひそう ・物事の表面。うわべ。うわっつら ・うわべだけで判断し、物事の本質に至らないこと、さま

黙許

蒲団・重右衛門の最後 著 田山花袋1907年 1902年 発行 村の若者の親なども、これはもう公然止むを得ざる事と黙許して居て 【黙許】もっきょ 知らないふりでそのまま許すこと。黙認

謝絶

蒲団・重右衛門の最後 著 田山花袋1907年 1902年 発行 訪問して来るのを非常に不快に思うけれど、今更それを謝絶することも出来なかった 【謝絶】しゃぜつ 相手の申し入れを断ること。「要求を―する」

惑溺

蒲団・重右衛門の最後 著 田山花袋1907年 1902年 発行 渠は性として惑溺することが出来ぬ或る一種の力を有っている 【惑溺】わくでき 夢中になり、心を奪われること。「酒に―する」

随喜

みみずのたはこと 上 著 徳冨健次郎大正2年発表 釣瓶なぞに随喜したが、此頃ではつい近所に来て泊っても寄っても往かなくなった 【随喜】ずいき ありがたく思い、大いに喜ぶこと

非望

みみずのたはこと 上 著 徳冨健次郎大正2年発表 儂は最初一の非望を懐いて居た。其は吾家の燈火が見る人の喜悦になれかしと謂うのであった 【非望】ひぼう 分不相応の大きな望み+

鼓吹

何処へ・入江のほとり 著 正宗白鳥明治40年〜 今の中に社会に士気を鼓吹しなければ、日本の国家も将来が案じられるて 【鼓吹】こすい ・元気づけ励ますこと。鼓舞 ・意見や思想を盛んに唱え、広く賛成を得ようとすること 「芳子に向っても尠からず―した。(…

寵幸

銀の匙 著 中勘助1921年 発行 富公がこの小女王の寵幸をほしいままにするのを指をくわえて見てるより 【寵幸】ちょうこう 特別かわいがられること。寵愛

とつおいつ

銀の匙 著 中勘助1921年 発行 などととつおいつ思案をめぐらした。が、とにかくひとの物をもってきて抽匣に入れてあるのが気がかりでならない 【とつおいつ】 考えが定まらずあれこれ思い悩むさま 「独りで思案にくれて、―している(黒髪・別れたる妻に送る…

味得

猫町 他十七篇 著 萩原朔太郎 何の苦にもならないものだということも、自分の生活経験によって味得した 【味得】みとく よく味わって理解し、自分のものにすること

忍受

愛と認識との出発 著 倉田百三1921年 発表 不幸に打たれて、しかもそれに抵抗する気のきわめて少なくなっている忍受の心 【忍受】にんじゅ 耐え忍び受け入れること。「屈辱を―する」

隠忍

愛と認識との出発 著 倉田百三1921年 発表 あの「ピルグリム・プログレス」の巡礼の持つ隠忍にして撓まぬ努力の精神 【隠忍】いんにん 苦しみを隠して堪え忍ぶこと。「―に―を重ねる」