2012-08-01から1ヶ月間の記事一覧

陰火

屋根裏の散歩者 著 江戸川乱歩 1925年〜 その類稀なる美貌と、陰火のような押し殺された情熱が、探偵の心を打った 【陰火】いんか ・幽霊などが出るときに燃える、奇怪な青白い火。きつねび。鬼火。幽霊火 ・人魂 「いまなお毒焔というに足る―を明滅させてい…

古往今来

屋根裏の散歩者 著 江戸川乱歩 1925年〜 犯人自身が、探偵をその殺人の現場へ案内するなんて、古往今来ないこったろうな 【古往今来】こおうこんらい 昔から今日に至るまで 「顫えたものは―たくさんあるまい(文鳥・夢十夜・永日小品)」 「―世の中にはいか…

和毛

鬼談百景 著 小野不由美 メディアファクトリー 2012/7/24日 発行 まだ和毛の生えている仔猫が三匹、とことこと三毛猫を追いかける 【和毛】にこげ 人や鳥獣の柔かい毛。うぶげ

酒毒

痴人の愛 谷崎潤一郎 1925年 発行 次第に酒毒が体の節々へ及ばして来て、ひだるく、ものうく、後頭部が鉛のようにどんより重く 【酒毒】しゅどく 飲酒による害毒。「―が回る」

面魂

痴人の愛 谷崎潤一郎 1925年 発行 ああ、それこそ淫婦の面魂を遺憾なく露わした形相でした 【面魂】つらだましい 強く激しい精神・気迫の現れている顔つき

周旋

痴人の愛 谷崎潤一郎 1925年 発行 杉崎女史の周旋とあれば家賃などはどうでもいいと云っているから、…と云うのでした 【周旋】しゅうせん ・売買や交渉などで、当事者間に立って世話をやくこと。とりもち。仲立ち。斡旋 ・ぐるぐる回ること

駻馬

痴人の愛 谷崎潤一郎 1925年 発行 長い間悍馬のようなナオミの蹄にかけられていた私には、それは想像したこともない「女らしさ」の極みで 【駻馬】かんば 気性が荒く、制御しにくい馬。あばれうま。あらうま。はねうま 「手のつけられない―でもあった(銀の…

芳烈

痴人の愛 谷崎潤一郎 1925年 発行 その一時間はたとえば芳烈な酒のように、私を酔わせずには置きませんでした 【芳烈】ほうれつ 香りが強いこと、さま。「―な果実」

気随気儘

痴人の愛 谷崎潤一郎 1925年 発行 若しも私に十分な金があって、気随気儘な事が出来たら、私は或は西洋に行って生活をし 【気随気儘】きずいきまま わがまま気ままに振舞うこと、さま 「―に朝からしぼりのゆかたを着て(もめん随筆)」

着殺す

痴人の愛 谷崎潤一郎 1925年 発行 数は多いがみんな安物であるし、どうせ傍から着殺してしまうのだから、 【着殺す】 一枚の衣服を、駄目になるまで着ること。着つぶす

頑健

痴人の愛 谷崎潤一郎 1925年 発行 私は頑健岩の如き恰幅ではありましたけれども、身の丈は五尺二寸ばかりで、先ず小男の部だった 【頑健】がんけん 体が頑丈で、大変健康なこと、さま。「―な肉体の持ち主」

火影

痴人の愛 谷崎潤一郎 1925年 発行 都会の夜の花やかな灯影を、言いようのない懐かしい気持ちで眺めたものです 【火影】ほかげ ・灯の光。灯火 「窓際に映っている―がフッと(ドグラ・マグラ)」 ・灯火に照らされてできる影

端境期

紀ノ川 著 有吉佐和子 1959年 発行 いくら端境期やいうたて、長福院の奥さんが麦混ぜた御膳とってなさるらて 【端境期】はざかいき 新米と古米が入れ替わる時期。転じて、物事が入れ替わる時期をいう 「老人と中年のちょうど―の年齢で(ラザロ・ラザロ)」

孤影

紀ノ川 著 有吉佐和子 1959年 発行 男の傍に立たない女には、強さにも賢さにもわびしい孤影がついて離れないものだと 【孤影】こえい 独りぼっちで、もの寂しそうに見える姿 「そこだけが―を風にさらして(うつろ舟)」

倉皇

紀ノ川 著 有吉佐和子 1959年 発行 歌絵と友一に守られて蒼惶として真砂町の家に戻った花は、玄関に迎えに出た書生に 【倉皇】そうこう 慌てふためくさま。落ち着かないさま。あわただしいさま 「竹さんは―、今、山を下って行った(暗夜航路)」 「身体を―と…

白皙

紀ノ川 著 有吉佐和子 1959年 発行 招いてみたところ、白皙の美男で如何にも秀才然としているのが多少気障に見えなくもなかったが 【白皙】はくせき 肌の色が白いこと

悲憤慷慨

紀ノ川 著 有吉佐和子 1959年 発行 男性横暴の世の中を悲憤慷慨したものばかりである。 【悲憤慷慨】ひふんこうがい 世間や自身の立場について、怒り、嘆くこと 「苦労を知らない現代っ子への―だの(漁師の愛人)」

侠気

紀ノ川 著 有吉佐和子 1959年 発行 むしろ父親同然に人に慕われる侠気のあるところが、却って周囲の 【侠気】きょうき 弱い者を助けようとする気性。男らしい気質

呱々の声をあげる

紀ノ川 著 有吉佐和子 1959年 発行 長男には、呱々の声を挙げる半年も前から政一郎という名前が待ち構えていたのに 【呱々の声をあげる】ここのこえをあげる ・赤ん坊が生れる。誕生する ・物事が新しく始まる。発足する

方途

紀ノ川 著 有吉佐和子 1959年 発行 金を造るためには、田地持ちは田地を、山持ちは山を売るより方途がない 【方途】ほうと 方法。手段。手立て

多事多端

紀ノ川 著 有吉佐和子 1959年 発行 二度目の出産をする前後は、真谷家の内も外も多事多端を極めていた。 【多事多端】たじたたん 仕事やいろいろなことで大変に忙しいこと。「―な一年だった」

深更

紀ノ川 著 有吉佐和子 1959年 発行 その深更から朝にかけて、紀ノ川は氾濫して川沿いの部落を荒らしまわった。 【深更】しんこう 夜更け。真夜中。深夜。「会合が―に及ぶ」 「連絡が入ったのは―。(先導者)」 「―、私の寝床は(少女外道)」 「この―になり…

飄逸

紀ノ川 著 有吉佐和子 1959年 発行 豊乃からこんな飄逸な手紙が届いたとき、花は声を出さず表情も変えずに笑っていた 【飄逸】ひょういつ 世間の出来事にわずらわされず、のびのびと呑気にしていること、さま

薫陶

紀ノ川 著 有吉佐和子 1959年 発行 紀本家で豊乃の薫陶を受けた彼女は花にかけて矜持を持っていたのだ 【薫陶】くんとう 人徳や品格で人を感化し、教育すること。「―の賜物」 「世喜は思うように監督―出来た」 「じきじきの―を受けながら(うつろ舟)」

娘三人持てば身代潰す

紀ノ川 著 有吉佐和子 1959年 発行 信貴は呆然として、娘三人持てば家が持たんちゅうな、ほんまやなあと嘆息した。 【娘三人持てば身代潰す】むすめさんにんもてばしんだいつぶす 娘の嫁入りには大変な費用がかかることをたとえる語

光芒

南下せよと彼女は言う: 旅先の七つの物語 著 有吉玉青 小学館 2012/7/11発行 イルミネーションがつくる光芒が重なり合い、大きく大きくふくらんでゆく。 【光芒】こうぼう 光のすじ。細長く伸びる一筋の光 「ヘッド・ライトの―の中で(スティル・ライフ)」

錦秋

南下せよと彼女は言う: 旅先の七つの物語 著 有吉玉青 小学館 2012/7/11発行 錦秋の中で、紗英子は軽く失望した。 【錦秋】きんしゅう 紅葉が錦の織物のように色鮮やかで美しい秋

嫉視

金閣寺 著 三島由紀夫 1956年発行 生活の魅惑、あるいは生活への嫉視が虜にしようとした 【嫉視】しっし ねたみ恨む気持ちで他人を見ること。「同級生を―する」 「女同士にありがちな―や反目の(美しき町・西班牙犬の家 他六篇)」 「周囲から集る羨望―の鎮…

すがれる

金閣寺 著 三島由紀夫 1956年発行 菊のすがれている素朴な小庭がある 【すがれる】 ・草木などが盛りの季節をすぎて枯れはじめる ・人が盛りをすぎて衰えはじめる ・物が古びる ・香が燃え尽きる

しののめ

金閣寺 著 三島由紀夫 1956年発行 しののめの仄白い砂利道の上に私と箒が動いている 【東雲】しののめ 東の空明るくなってきたころ。夜明け。あけぼの