2013-08-01から1ヶ月間の記事一覧

叢林

春の雪 著 三島由紀夫 1965年発行 沼を囲む叢林へ下りる径がついていた。 【叢林】そうりん ・樹木が群がって生えている林 ・大きな寺院。特に禅寺。禅林

淵源

春の雪 著 三島由紀夫 1965年発行 何でも物事の淵源に興味をよせがちな性向を充たすために、 【淵源】えんげん 物事の基づくところ。根源。みなもと。「文化の―にさかのぼる」△

折花攀柳

春の雪 著 三島由紀夫 1965年発行 たまたま父の誘いに乗って、折花攀柳の巷に遊び、男が誰しも通らなくては 【折花攀柳】せっかはんりゅう 花柳街で、遊女らと遊ぶこと

耳立つ

春の雪 著 三島由紀夫 1965年発行 あんなに庭いちめんの虫の音が、耳立ってきこえたことはない 【耳立つ】みみだつ ・その音が特に耳につく。耳障りに聞こえる ・聞いて心にとめる。耳にとまる

死苦

春の雪 著 三島由紀夫 1965年発行 友の死苦をさえ看過せねばならぬということ 【死苦】しく 死ぬ時の苦しみ。死ぬような苦しみ

小濁り/細濁り

春の雪 著 三島由紀夫 1965年発行 湧き起る水底の砂のような、細濁りがさすのをいやに思った。 【小濁り/細濁り】ささにごり 水がわずかに濁ること 「小さいながら―もないほどに手入れがゆきとどき(影を買う店)」

万巻

春の雪 著 三島由紀夫 1965年発行 本を読みすぎるわけでもないのに、万巻の書を読み疲れたような顔を 【万巻】ばんかん 多くの書物、巻物。「―の書」 「博士みたいに、まさか、―の書を読んだわけでは(きりぎりす)」 「與次郎が遺した―の書物を(本にだって…

浮薄

春の雪 著 三島由紀夫 1965年発行 飯沼はその言葉の浮薄、その責任感の欠如、その潤んだ目にうかぶ恍惚を 【浮薄】ふはく あさはかで軽々しいこと、さま。軽薄。「軽佻(けいちょう)―」 「この―な若者の矜りをずたずた(潮騒)」 「初めからその―を避けてお…

奢侈

春の雪 著 三島由紀夫 1965年発行 侯爵家の奢侈はすべて彼の脳裏の像に逆らって、素朴な少年の心を傷つけた 【奢侈】しゃし 過ぎた贅沢。身分不相応に金を使うこと、さま。「―な暮らし」 「さっそく―をきわめた銚子やらさかずきや(うつろ舟)」

機略

久生十蘭短篇選 著 久生十蘭 心に秘密を持っている娘というものは、どれほど忍耐強く、またどれほど機略に富むものか 【機略】きりゃく 状況に応じたはかりごと。臨機応変な策略。「―に富む」

影身

久生十蘭短篇選 著 久生十蘭 並んだ姿を見せたのは、影身に添うことだけはゆるしてくれと 【影身】かげみ ・影のように、いつも寄り添って離れないこと。「―離れず」「―に添う」

風致

久生十蘭短篇選 著 久生十蘭 このあたりの自然の風致は、のどかすぎてとるところがないと思っていたが 【風致】ふうち 自然の風景の持つおもむき、味わい。風趣 「りっぱなものではないが、自然の―は十分に具えている(牛肉と馬鈴薯)」

金城鉄壁

久生十蘭短篇選 著 久生十蘭 これならどこから突かれても金城鉄壁というところまでやったつもり 【金城鉄壁】きんじょうてっぺき 非常に堅固な城壁。守りが非常に固く、すきがないことのたとえ 「友彦のたてこもった―のような個室(うつろ舟)」SSS

坦懐

久生十蘭短篇選 著 久生十蘭 自己の感動に溺れることなく、いかにも坦懐に語られ、謙虚な態度を最後まで 【坦懐】たんかい 心が広く、わだかまりのないこと。物事にこだわらないこと。「虚心―」

理路

久生十蘭短篇選 著 久生十蘭 一人の女ぐらいで感情の理路を誤るようなことはありません 【理路】りろ 物事の道理。考えや話の筋道

境栽

久生十蘭短篇選 著 久生十蘭 花木に目印をつけながら境栽のほうへ行くと、塀際の薄暗い飼箱のなかに 【境栽】きょうさい 花壇や道路に沿って植えた、低木や園芸植物

風姿

久生十蘭短篇選 著 久生十蘭 どうしてむかしのままの風姿を持続できたか、それがふしぎだった 【風姿】ふうし ・姿かたち。身なり。風采 「白い花のようなその―は、いまなお(今昔)」 ・和歌や能楽など、芸術的な美を表現した姿。風体

綰ねる

久生十蘭短篇選 著 久生十蘭 ムシュウは綰ねたザイルを肩にかけてピッケルを持ち、マダムは緑色のサングラスをして水筒を吊っていた 【綰ねる】わがねる 細長い物を曲げて輪にする

透き見/隙見

久生十蘭短篇選 著 久生十蘭 自分はこれが、それを隙見しようとした自分にたいする、運命の復讐であるような気がした 【透き見/隙見】すきみ すきまからのぞいてみること。のぞき見 「夜な夜な―していたに違いない(鍵・瘋癲老人日記)」

高邁

久生十蘭短篇選 著 久生十蘭 そういうほとんど比例のないほどの高邁な、破格の精神の持ち主に限るのだ 【高邁】こうまい 志が高く、抜きんでていること、さま 「―の思想の所有者(地上)」 「一種の―さを漂わせながら(嘔吐)」

貪食

久生十蘭短篇選 著 久生十蘭 彼の貪食ぶりは言語に絶した壮観であった 【貪食】どんしょく/たんしょく むさぼり食うこと。

鬼魅

久生十蘭短篇選 著 久生十蘭 平安朝の中期は、竜や、狐狸の妖異や、鳥の面をした異形の鬼魅、そのほか外道頭か青女とか、そういった怪物が横行闊歩する天狗魔道界の全盛時代で 【鬼魅】きみ 鬼と化け物。妖怪変化

清逸

久生十蘭短篇選 著 久生十蘭 白膠木の荘重な朱の色が清逸の気にみちた簡楚な空間に華麗な彩りをあたえていた 【清逸】せいいつ 清らかで、世俗的でないことOOO

追懐

久生十蘭短篇選 著 久生十蘭 ああいうひとだったのだから、仏蘭西の秋の追懐にはいい知れぬ深さがあるのでしょうが 【追懐】ついかい 思い出して懐かしむこと。追想

艶名

久生十蘭短篇選 著 久生十蘭 与兵衛はむかし欧羅巴で艶名を流した有名な粋人だが 【艶名】えんめい 色恋の噂

肉置き

久生十蘭短篇選 著 久生十蘭 冬女氏は肉置きのいい大柄なひとで、身の振りも大きくゆったりとし 【肉置き】ししおき 体の肉のつきぐあい 「肩や臀のむっちりとした―は(蓼食う虫)」

惰気

久生十蘭短篇選 著 久生十蘭 ミストラル気味の寒い尖った風が四十日目の惰気をいっぺんに吹きはらって 【惰気】だき だらけた気分。なまけた心

蒼古

久生十蘭短篇選 著 久生十蘭 それが蒼古たる大文章で、輪廻とか応報とかむずかしいことを長々と 【蒼古】そうこ 古めかしく深い趣のあるさま 「―とした書物が(華岡青洲の妻)」

性情

久生十蘭短篇選 著 久生十蘭 内実は悪念のさかんな、妬忌と復讐の念の強い、妙に削げた陰鬱な性情らしく 【性情】せいじょう ・人の性質と心情。こころ ・生まれついた性質 「あの理智的な―を有ちながら(小さき者へ 生れ出ずる悩み」

雪隠で饅頭

久生十蘭短篇選 著 久生十蘭 弁解しようともしなかったが、雪隠で饅頭を食うようなケチなことをしないのが安部の本領 【雪隠で饅頭】せっちんでまんじゅう 空腹を満たすのに場所などかまわないことのたとえ また、人に隠れて自分だけいい思いをすること