2012-10-01から1ヶ月間の記事一覧

鶏口となるも牛後となるなかれ

さようなら、猫 著 井上荒野 光文社 2012/9/20 発行 何度も繰り返してきた口調で「鶏口となるも牛後となるなかれ、だから」と答えた。 【鶏口となるも牛後となるなかれ】けいこうとなるもぎゅうごとなるなかれ 大きな集団にいて人の尻についているよりも、小…

針小棒大

さようなら、猫 著 井上荒野 光文社 2012/9/20 発行 その同僚は、針小棒大に伝えたのである。 【針小棒大】しんしょうぼうだい 些細な事柄を大げさに誇張して言い立てること、そのさま。「―な記事内容」 「―の記事も沢山あったに違いありません(みみずのた…

深情け

ゼラニウムの庭 著 大島真寿美 ポプラ社 2012/9/15 発行 壊してしまうには忍びなかった。深情けだったわね、後になってそう思った 【深情け】ふかなさけ (異性への)情愛の度がすぎること、またその情愛 「―のもののけにとり憑かれて(抒情的恐怖群)」

心奥

ゼラニウムの庭 著 大島真寿美 ポプラ社 2012/9/15 発行 まるで、わたしたちの心奥に、目に見えぬ楔が打たれているかのように 【心奥】しんおう 心の奥、底。「―に秘めた思い」

筍生活

ゼラニウムの庭 著 大島真寿美 ポプラ社 2012/9/15 発行 筍生活(物を売って食いつなぐことをそう呼ぶのだそうだ)はちっとも終わりが来なかった 【筍生活】たけのこ 筍の皮を一枚ずつはいでいくように、家財や衣類など身の回りの物を少しずつ売りながら生活…

日にち薬

ゼラニウムの庭 著 大島真寿美 ポプラ社 2012/9/15 発行 芳しい効果はなかったねえ。手立てがなかった。日にち薬でしょう、って 【日にち薬】 時間の経過によって病を治そうとすること

寿ぐ

ゼラニウムの庭 著 大島真寿美 ポプラ社 2012/9/15 発行 家で働く者皆に祝い膳が振る舞われ、揃って双子の誕生を寿いだという。 【寿ぐ】ことほぐ 喜びや祝いの言葉を述べる 「成就を言祝ぐ民衆(黄色い水着の謎)」 「再会を―いだ(この女)」 「―ぎ奉るの…

松の内

ゼラニウムの庭 著 大島真寿美 ポプラ社 2012/9/15 発行 ちょうど十年前(平成二年)のことだ。元旦の夜に倒れ、松の内に息を引き取った。 【松の内】まつのうち 正月の松飾りをたてておく期間。元旦から7日、もしくは15日まで。注連(しめ)の内 「そう。―…

茫洋

秘密は日記に隠すもの 著 永井するみ 双葉社 2012/7/22 発行 外見は茫洋として牛を思わせ、動作がのろく、反応も鈍い。勉強が大の苦手だった上、 【茫洋】ぼうよう 広々として限りのないさま。広くて見当がつかないさま。「―たる平原」 「昔のことは輪郭を失…

合歓綢繆

桜の実の熟する時 著 島崎藤村 1919年 合歓綢繆を全うせざるもの詩家の常ながら、特に厭世詩家に多きを見て思うところなり。 【合歓綢繆】ごうかんちゅうびゅう 男女が深く愛し合うさま【合歓】ごうかん ・ともに喜び楽しむこと ・男女が共寝すること。同衾 …

鋳掛屋の天秤棒

桜の実の熟する時 著 島崎藤村 1919年 出過ぎて生意気だというところから、「鋳掛屋の天秤棒」という綽名を取っていた。 【鋳掛屋の天秤棒】いかけやのてんびんぼう (鋳掛屋の天秤棒は普通のものより長いことから)でしゃばりな人、またその行為

気焔

桜の実の熟する時 著 島崎藤村 1919年 帰って来ている日には、殊に玉木の小母さんの気焔が高かった。 【気焔】きえん 炎のような盛んな気概。論戦などで見られる威勢のよさ。「―を吐く」

食客

桜の実の熟する時 著 島崎藤村 1919年 玉木さんは食客らしく遠慮勝ちに膝をすすめて、夫婦して並んで食台の周囲に坐った 【食客】しょっかく ・才ある人物を客として抱えておくこと ・居候 「牢屋敷で―をしている浪人で(猫間地獄のわらべ歌)」

抄訳

桜の実の熟する時 著 島崎藤村 1919年 十八世紀の詩人や文学者の評伝を三冊ほど抄訳した。学校の図書館から本を借りてきては 【抄訳】しょうやく 原文のところどころを翻訳すること。またその訳文

諸方

桜の実の熟する時 著 島崎藤村 1919年 講演を聞こうとして諸方から集って来る多くの青年のことを思いやった。 【諸方】しょほう あちこち。様々な方向・場所 「―と手紙や歌をやり取りする(はなとゆめ)」 「居所の分かっている―の男へ送った(何処へ・入江…

翹望

桜の実の熟する時 著 島崎藤村 1919年 こういう翹望はあだかもそれが現在の歓喜であるかの如くにも感ぜられた。 【翹望】ぎょうぼう 首を長くして待ち望むこと。強く望んで待つこと。 「凡人が天才の出現を―する(三太郎の日記)」

封緘

あのころのデパート 著 長野まゆみ 新潮社 2012/8/20 発行 デパートではネーム入りシール(形態としてはテープ)を封緘がわりとする。 【封緘】ふうかん 手紙などの封を閉じること、また閉じたもの。封。「―した郵便物」 「封蝋で―した手紙を彼は受け取る(…

匹夫匹婦

小僧の神様 城の崎にて 著 志賀直哉 1917年〜 それで自分の方でもこれを匹夫匹婦の痴情の争いには、したくない。 【匹夫匹婦】ひっぷひっぷ 身分いやしく、教養のない男女。平凡でつまらぬ男女

夜前

小僧の神様 城の崎にて 著 志賀直哉 1917年〜 「夜前到頭猫に一羽とられました」と云った 【夜前】やぜん 前日の晩。昨夜

遁世

小僧の神様 城の崎にて 著 志賀直哉 1917年〜 「又、出家遁世ですか」「本統に俺は旅行するから、直ぐ支度をしてくれ」 【遁世】とんせい ・隠棲して世俗から逃れること 「―を決め込んでいるようで(茗荷谷の猫)」 ・出家すること 「このところ出家―を思う…

擱筆

小僧の神様 城の崎にて 著 志賀直哉 1917年〜 残酷な気がして来た。それ故作者は前の所で擱筆する事にした。 【擱筆】かくひつ 書くのをやめること。書き終えること。「小説を―する」

四囲

小僧の神様 城の崎にて 著 志賀直哉 1917年〜 田舎だから四囲の生活との釣合い上でも子供を余りに大事にするのは眼立ってよくなかった 【四囲】しい ・四方を取り囲むこと ・周囲、まわり。「―の状況」

峻酷

小僧の神様 城の崎にて 著 志賀直哉 1917年〜 小江は甲斐から峻酷に調べられた。今は本統の事を云うより仕方がないと思った 【峻酷】しゅんこく 非常に厳しく、情け容赦がないこと、さま