2012-11-01から1ヶ月間の記事一覧

淡彩

真珠夫人 著 菊池寛 1920年〜 信一郎は、淡彩に夏草を散らした薄葡萄色の、金紗縮緬の着物の下に 【淡彩】たんさい 薄く彩ること。あっさりとした彩色

誰何

真珠夫人 著 菊池寛 1920年〜 しわがれた声で闇の中の見知らぬ人間を誰何した。が、相手はまだ笑い声を収めたまま、 【誰何】すいか 呼び止めて何者か問いただすこと。「警備員に―される」 「―しようとした途端(夜の淵をひと廻り)」

微醺

真珠夫人 著 菊池寛 1920年〜 微醺を帯びた勝平は、その赤い巨きい顔に、暴風雨などは、少しも心に止めていないような 【微醺】びくん ほんのり酒に酔うこと。ほろ酔い。微酔 「―をおびて通りに出たところ(蘆屋家の崩壊)」

剛愎

真珠夫人 著 菊池寛 1920年〜 自分の子の卑しい笑い顔を見たときに、剛愎な勝平も、グンと鉄槌で殴られたように思った 【剛愎】ごうふく 頑固で人に従わないこと。意地っ張りで気が強いこと、さま

情火

真珠夫人 著 菊池寛 1920年〜 陶酔の醒め際に、彼の烈しい情火が、ムラムラと彼の身体全体を、嵐のように包むのだった 【情火】じょうか 燃えるように高ぶる情欲

良風美俗

真珠夫人 著 菊池寛 1920年〜 ある者は、成金の金に委せての横暴が、世の良風美俗を破るといって憤慨した。 【良風美俗】りょうふうびぞく 立派で美しい風習・風俗

私淑

真珠夫人 著 菊池寛 1920年〜 荘田勝平は唐沢男に私淑しているのだ。彼は数十万円を投じて唐沢家の財政上の窮状を救ったのだ。 【私淑】ししゅく 陰ながらその人を師と仰ぎ、模範として学ぶこと 「私も―しておりましたが(ドグラ・マグラ)」 「簑村文學士に…

世道人心

真珠夫人 著 菊池寛 1920年〜 第二の小森幸子事件であると称して、世道人心に及ぼす悪影響を嘆いた。 【世道人心】せどうじんしん 人の世の道徳と、それを守るべき人の心。

赤手

真珠夫人 著 菊池寛 1920年〜 赤手にして一千万円を超ゆる暴富を、二三年のうちに、攫取した面魂が躍如として 【赤手】せきしゅ 手に何も持っていないこと。何の武器も持っていないこと。素手。徒手

浮沈

真珠夫人 著 菊池寛 1920年〜 はしたないとは知りながら、一家の浮沈に係る話なので、応接室に沿う縁側の椅子に 【浮沈】ふちん ・浮いたり沈んだりすること。うきしずみ ・栄えたり衰えたりすること。うきしずみ 「貴女にとれば一生―の瀬戸際でしょう(黒死…

陋劣

真珠夫人 著 菊池寛 1920年〜 卑怯にも陋劣にも、金の力であの清廉な父を苦しめようとするのかしら。 【陋劣】ろうれつ いやしく軽蔑すべきであること、さま。卑怯。下劣。「―な男」 「なおいっそう―な考えだ(文鳥・夢十夜・永日小品)」 「外面道徳の専権…

口銭

真珠夫人 著 菊池寛 1920年〜 今日の縁談なども、纏まればいくらという、口銭が取れる仕事だろう。 【口銭】こうせん 仲介をした手数料

木の下闇

真珠夫人 著 菊池寛 1920年〜 ガスの光が、ほおんじろく湿んでいる公園の木下暗(このしたやみ)を、ベエトーフェンの「月光曲」を聴いた感動を 【木の下闇】このしたやみ 木が茂っていて、その下が暗いこと、その場所 「東照宮前の―に西川の手をひいて(三…

小刀細工

真珠夫人 著 菊池寛 1920年〜 いやにコセコセしていて、人工的な小刀細工が多すぎるじゃありませんか。 【小刀細工】こがたなざいく ・小刀で細工を施すこと ・こせこせとした策略。「―をろうする」

満を引く

真珠夫人 著 菊池寛 1920年〜 模擬店でビールの満を引いている人達の哄笑も、勝平の耳には、彼の金力に対する讃美の声のように聞こえた 【満を引く】まんをひく ・弓を十分に引き絞る ・酒をなみなみとついだ杯をとって、飲む

嬌羞

真珠夫人 著 菊池寛 1920年〜 人々の環視のうちに、微笑とも嬌羞とも付かぬ表情を、湛えた面は、くっきりと皎く輝いていた。 【嬌羞】きょうしゅう 女性のなまめかしい恥じらい。「―を含んだ笑み」

目睫

真珠夫人 著 菊池寛 1920年〜 もう、死期の目睫の間に迫っていることが判った。 【目睫】もくしょう 極めて近いところ。目前。「―に迫った式」 【目睫の間】もくしょうのかん 距離や時間などが極めて近いこと

放胆

真珠夫人 著 菊池寛 1920年〜 彼は運転手の放胆な操縦が、この惨禍の主たる原因であることを、信じたからであった。 【放胆】ほうたん きわめて大胆であること、さま。「―な言動」

婚する

真珠夫人 著 菊池寛 1920年〜 それほど、信一郎は新しく婚した静子に、心も身も与えていたのである。 【婚する】こんする 結婚する。夫婦になる。

隠見

真珠夫人 著 菊池寛 1920年〜 汽車の進むに従って、隠見する相模灘はすすけた銀の如く、底光を帯びたまま澱んでいた。 【隠見】いんけん 見えたり隠れたりすること。見え隠れ。「木々の間に―する家並み」

刎橋

エムブリヲ奇譚 著 山白朝子 メディアファクトリー 2012/3/2 発行 「橋がある。あれは刎橋だ」 【刎橋】はねばし 江戸時代に存在した架橋形式 (参考:http://www.kyoryoshimbun.com/cn4/pg97.html)