自然

瘴気

鏡陥穽 著 飛鳥部勝則2005/7 発行 瘴気を発する底なし沼の縁に立った気分だ 【瘴気】しょうき 熱病を起させるという山川の毒気

営巣

ピカルディの薔薇 著 津原泰水2006年11月 発行 倉庫や物置などに営巣する二十日鼠、土中や下水管に営巣する溝鼠 【営巣】えいそう 動物が巣を作ること

根雪

瑠璃の雫 著 伊岡瞬2012年11月8日 発行 半ば根雪になった白い塊に驚いたり喜んだりしている 【根雪】ねゆき 解けないうちに雪がさらに積もって、雪解けの時期まで残る下積みの雪。(季)冬

青時雨

忌中 著 車谷長吉2003年 発行 門の前で降りると、突然、頭上から青時雨が落ちて来た。あたしは門の中へ駆け 【青時雨】あおしぐれ 青葉の木立から落ちる水滴を、時雨に見立てた語。(季)夏

荒蕪

抒情的恐怖群 著 高原英理2009年4月10日 発行 必要資料山積し荒蕪を極めた書斎にしては異例の幸い、すぐ見つかった 【荒蕪】こうぶ 土地が荒れて、雑草の茂るがままになっていること。「―地」OOO

枯死

夜の淵をひと廻り 著 真藤順丈2016年1月31日 発行 あれは枯死してるんだ 【枯死】こし 草木が枯れてしまうこと

奇観

夜の淵をひと廻り 著 真藤順丈2016年1月31日 発行 サルヴァドール・ダリ風のただれた奇観を見ている 【奇観】きかん 珍しい眺め。ほかでは見られないような風景。「―を呈する」

陰樹

営繕かるかや怪異譚 著 小野不由美2014年12月発行 塀に囲まれ、陽当たりが良くない。陰樹ばかりの庭の向こうには 【陰樹】いんじゅ 幼樹のころに日陰でも生育できる樹木。ブナ・シイ・カシなど

山稜

ラザロ・ラザロ 著 図子慧1998年発行 女は背後の小高い山をふり仰いだ。山稜の輪郭がもこもこと 【山稜】さんりょう 山頂から山頂へ続く峰すじ。山の尾根

雪渓

スティル・ライフ 著 池澤夏樹1988年発行 星雲や針葉樹林や渓流や雪渓を見て心に浮かぶことを口にしても 【雪渓】せっけい 雪や氷が夏でも残っている高山の谷。(季)夏

高峰

スティル・ライフ 著 池澤夏樹1988年発行 あきらかに日本以外の土地の鋭い高峰もあった 【高峰】こうほう 高くそびえている峰。ある一群の中でひときわ優れているものにも用いる

終夜

牛肉と馬鈴薯 著 国木田独歩明治35年ごろ〜 二人の仲はいかになりゆくべき、このことを思いて昨夜も、よもすがら泣き明かし候 【終夜】よもすがら 一晩中。夜どおし

要害

砂の女 著 安倍公房1962年発行 まるで天然の要害のなかに住んでいるようなものである 【要害】ようがい ・地形がけわしく守りに有利なこと、その場所。「―の地」 ・戦略上、重要な場所に築いた砦。要塞 ・防御すること。用心すること

三角州

よるねこ 著 姫野カオルコ2002/8 発行 大使館の重厚な装備のなされた塀が邪魔をして、ちょうど三角州のようになっている 【三角州】さんかくす 河水の運搬してきた土砂が河口付近に堆積 (たいせき) してできた地形。三角に似た形。デルタ (参考:https://ja…

夏野

水声 著 川上弘美2014/9/30 発行 頭の中で白い夏野となつてゐる と、陸の字が書かれたメモが、 【夏野】なつの 夏草の茂る野原。夏野原。(季)夏

堆積

森は知っている 著 吉田修一2015/4/22 発行 濡れた木の葉が堆積している 【堆積】たいせき 幾重にも高く積み重なること。積み重ねること。そのもの。「土砂が―する」 「なにせ屍体は上に―するからな(蘆屋家の崩壊)」

山容

にぎやかな落葉たち 著 辻真先2015/2/18 発行 山そのものは熊がうずくまったように鈍重な山容で、 【山容】さんよう 山の形

湖水

思ひ出の記 著 小泉節子大正3年 西の方は湖水と天とびつたり溶けあふて、静かな波の上に白帆が往来して居ます 【湖水】こすい 湖。湖の水

落梅

暢気眼鏡・虫のいろいろ―他十三篇 著 尾崎 一雄昭和8年〜 机に頬杖ついていると、そとでぽとりと音がした。落梅なのだ 【落梅】らくばい 散り落ちた梅の花や実

嵐気

黒髪・別れたる妻に送る手紙 著 近松秋江大正時代 病み上がりのようになっている体が、深山の嵐気に襲われて、ぞくぞくと 【嵐気】らんき 湿り気を含んだ山の空気。山気TTT

金波

一千一秒物語―稲垣足穂コレクション 著 稲垣足穂大正〜昭和 ところが、金波が寄せている岩陰に、何やら棒ぐいが突立って、揺れていた 【金波】きんぱ ・日光や月光が映って金色に輝く波。「―銀波」 ・織り物の名

野分

或る少女の死まで 他二篇 著 室生犀星 野にはもう北国の荒い野分が吹きはじまって 【野分】のわき 秋から冬にかけて吹く暴風。特に二百十日・二百二十日前後に吹く台風。(季)秋 「大空は水のごとく澄んでいながら―吹きすさんで(牛肉と馬鈴薯)」AAA

景情

或る少女の死まで 他二篇 著 室生犀星 涼みかたわら歩く人も多かった。私はそれらの景情にひたりながらも 【景情】けいじょう 世の自然のありさま。情景

妖雲

八軒長屋 著 村上浪六明治39年 はははは妖雲飛散、どりゃ御免を蒙ッて、お相手をしようかね 【妖雲】よううん 不吉の前兆を示す怪しい雲。また事件の起こりそうな不吉な気配 「実は、それは―といったてあいだったにちがいない(十蘭レトリカ)」

蚕食

合本 三太郎の日記 著 阿部次郎1914年・1915年発行 同時に更に更に有意義なる生活と修養とに費すべき時間が非常なる蚕食を受ける 【蚕食】さんしょく 蚕が桑の葉を食むように、他の領域を片端からだんだん侵していくこと 「心身を―する飢餓(本にだって雄と…

豺狼

合本 三太郎の日記 著 阿部次郎1914年・1915年発行 赤子を豺狼の群に投ずるは愚人のことである 【豺狼】さいろう ・山犬とオオカミ ・残酷で欲深い人。むごたらしいことをする人

群羊

合本 三太郎の日記 著 阿部次郎1914年・1915年発行 羊の皮を着て群羊の甘心を買ふの奸物ではない。余は独自の思想を有する事を標榜して 【群羊】ぐんよう ・多くのヒツジ ・多くの弱者

草生

地上―地に潜むもの 著 島田清次郎1919年発行 露に湿れた草生が靴の下にあった。水中のように澄みわたった闇である 【草生】くさふ 草の生えている所。草原

暗潮

蒲団・重右衛門の最後 著 田山花袋1907年 1902年 発行 一座の中に明かに恐るべく忌むべく悲しむべき一種の暗潮の極めて急速に走りつつあるのを 【暗潮】あんちょう ・表面に現れない潮の流れ ・表面に現れない風潮・勢力

激湍

蒲団・重右衛門の最後 著 田山花袋1907年 1902年 発行 村の全景がすつかり手に取るやうに見えて、尾谷川の閃々と夕日にかがやく激湍や 【激湍】げきたん 勢いのはげしい早瀬