2015-01-01から1年間の記事一覧

真率

十蘭レトリカ 著 久生十蘭 欧米派の連中に対しては真率な忿懣の念を感じ、西洋の文物に耽って 【真率】しんそつ 真面目で飾り気がないこと、さま。「―な態度」

窮境

十蘭レトリカ 著 久生十蘭 ギリギリの窮境を切りぬけ、人も殺し、ゾッとするような放れ業もやった 【窮境】きゅうきょう 非常に苦しい境遇・立場。窮地。「―に陥る」

因果の小車

十蘭レトリカ 著 久生十蘭 すりへらすような眼に逢わせた。巡る因果の小車だ。諦めてブクブク沈んでしまえ 【因果の小車】いんがのおぐるま 原因と結果が永久に繰り返されるさま。因果は巡る小車

酔眠

十蘭レトリカ 著 久生十蘭 淵川に浮び上った死美人といった体で酔眠していらっしゃる 【酔眠】すいみん 酒に酔って眠ること。酔臥

七里結界/七里けっぱい

十蘭レトリカ 著 久生十蘭 どうするか、見ていろ。今日こそは七里けっぱい!揉みくちゃにして鼻汁をかんでやる! 【七里結界/七里けっぱい】しちりけっかい/しちりけっぱい ・魔障の侵入を防ぐため7里四方に境界を設けること ・ひどく嫌って人を寄せつけない…

千番に一番の兼ね合い

十蘭レトリカ 著 久生十蘭 では、いよいよ飛び出すか。…これこそ、千番に一番の兼合いだ 【千番に一番の兼ね合い】せんばんにいちばんのかねあい 千回やって一回成功するかどうかわからないほど可能性が低いこと。極めて困難なこと

頓悟

十蘭レトリカ 著 久生十蘭 山座は、思いもかけぬ頓悟をひらいた 【頓悟】とんご 仏語。長期修行を経ないで一足飛びに悟りを開くこと

端倪すべからざる

十蘭レトリカ 著 久生十蘭 端倪すべからざる複雑なレトリックを駆使して、柔かく且つ穏やかに 【端倪すべからざる】たんげいすべからざる はじめから終わりまで安易に推しはかるべきではない、推測が及ばない、計り知れない。「彼女には―才能がある」 「「―…

併呑

十蘭レトリカ 著 久生十蘭 和蘭は白耳義に併呑され、伊太利は土耳古と擦り替えられる。忌々しいことこの上もない 【併呑】へいどん あわせのむこと。他勢力を自分の勢力下に入れること。「A国を―する」

冤枉

十蘭レトリカ 著 久生十蘭 参謀本部の書証偽造によるドレェフェス大尉の冤枉、仏蘭西阿弗利加チャド地方の 【冤枉】えんおう 無実の罪。冤罪。濡れ衣。「―に陥れる」 「―に死せし婦人(押絵の奇蹟)」

人後に落ちない

十蘭レトリカ 著 久生十蘭 ある点ではソルボンヌさんといえども決して人後に落ちないのであるから 【人後に落ちない】じんごにおちない 他人に先を越されない。ひけをとらない

辱知

十蘭レトリカ 著 久生十蘭 巴里の辱知はあいにくいずれも質朴な連中ばかりで、こういう際には 【辱知】じょくち 知り合いであることをへりくだっていう語。辱交。「―の間柄」

十蘭レトリカ 著 久生十蘭 お二人がお始めになるのを待っている。場内闃として水をうったよう 【闃】げき 静まり返ったさま。ひっそりして人けのないさま

妙諦

十蘭レトリカ 著 久生十蘭 丁半の賭博に勝つ妙諦は奇数に賭けたり偶数に賭けたりアタフタせずに 【妙諦】みょうてい すぐれた真理。そのものの真価

閲する

十蘭レトリカ 著 久生十蘭 こういう面白からざる数日を閲したある日の夕方 【閲する】けみする ・調べる。見て確かめる。改める ・月日を過ごす。経る 「半世紀あまりを―た歳月によって(影を買う店)」

婚資

十蘭レトリカ 著 久生十蘭 積み立て晴れて帰朝の暁、それを婚資の一端に供しようという雄大な希望がある 【婚資】こんし 花婿サイドが花嫁の親族に対して贈る財や金品

蕩揺

十蘭レトリカ 著 久生十蘭 ありとあらゆる絢爛たる物質非物質が五彩の雲のように蕩揺している 【蕩揺】とうよう 揺り動かすこと。揺れ動くこと

琴瑟相和す

十蘭レトリカ 著 久生十蘭 したがって二人は琴瑟相和するというわけにはゆかない。ほとんど口もきき合わず 【琴瑟相和す】きんしつあいわす 琴と瑟との音がよく合う。夫婦仲が非常によいたとえ▽

兎の毛

蓼食う虫 著 谷崎潤一郎昭和3年 それを今日まで鵜の毛ほども感づかれないようにしていた幼い者の心づかいが 【兎の毛】うのけ ・ウサギの毛 ・極めて微細な物事のたとえ。ほんの少し。「―ほどもない」

密か事

蓼食う虫 著 谷崎潤一郎昭和3年 彼は自分のみそかごとを美佐子がうすうす気づいているといないとに拘わらず 【密か事】みそかごと ・秘密。内緒ごと ・男女が密かに情を通じ合うこと。密通

姥桜

蓼食う虫 著 谷崎潤一郎昭和3年 女将株の貫目もあり、活気もあり、何処やらにまだ姥桜の色香さえあって 【姥桜】うばざくら ・葉が出るより先に花が開く桜の通称。ヒガンザクラ・ウバヒバンなど ・女盛りを過ぎてもなお美しさや色気が残っている女性

所産

蓼食う虫 著 谷崎潤一郎昭和3年 たとえばこの農民芸術の所産である人形芝居にしてからが、とにかくこれだけ 【所産】しょさん 結果として生み出されたもの。作り出したもの。「努力の―」 「妄想の―にすぎなかった(うつろ舟)」

落花狼藉

蓼食う虫 著 谷崎潤一郎昭和3年 舞台の方では見物席の落花狼藉をそ知らぬ風で、何人目かの太夫が床へ上っていた 【落花狼藉】らっかろうぜき ・花がばらばらに散ること。転じて、物が乱雑に散らばっていること ・花を乱雑に散らすこと。転じて、女子供に乱暴…

心緒

蓼食う虫 著 谷崎潤一郎昭和3年 妻の心緒と自分の心緒とが一つの脳髄の作用のように理解し合って別れたかった 【心緒】しんしょ/しんちょ 思いのはし。心の動き

戴き立ち

蓼食う虫 著 谷崎潤一郎昭和3年 「それではあの、戴き立ちで甚だ勝手なんですが、…」「もう、お帰りやすか、ほんまに」 【戴き立ち】いただきだち 酒食のもてなしを受けてすぐ席を立つこと

密画

蓼食う虫 著 谷崎潤一郎昭和3年 富士の下には広重風の町の景色の密画があって、横に「沼津」と記してある 【密画】みつが 細かいところまで綿密に描いた絵。細密画

俗才

思ひ出の記 著 小泉節子大正3年 勘定なども下手でした。そのような俗才は持ちませんでした。ただ子供ができたり 【俗才】ぞくさい 俗事に長じた才能。世才

延引

思ひ出の記 著 小泉節子大正3年 親に頼みましたが、宿の主人は唯ハイハイとばかり云って延引していましたので 【延引】えんいん 物事を先に延ばすこと。遅らせること

湖水

思ひ出の記 著 小泉節子大正3年 西の方は湖水と天とびつたり溶けあふて、静かな波の上に白帆が往来して居ます 【湖水】こすい 湖。湖の水

口跡

暢気眼鏡・虫のいろいろ―他十三篇 著 尾崎 一雄昭和8年〜 七ツ年上の私より、諸事はっきりしていた。第一に、口跡がよかった 【口跡】こうせき 言葉遣い。話し振り。特に歌舞伎俳優の台詞の言い方、声色 「―が悪いから何を言ってるのか判らない(4ページミス…