2015-06-01から1ヶ月間の記事一覧

酒は憂いの玉箒

八軒長屋 著 村上浪六明治39年 こンな時こそ何とか言いましたッけ、むむそうよ憂いを払う玉箒だ、乙な事知ッてるでしょう 【酒は憂いの玉箒】さけはうれいのたまははき 酒は心の憂いを取り除いてくれる素晴らしい箒のようなものだということ

美果

八軒長屋 著 村上浪六明治39年 決心した今、ここで事実かくの如き愛の美果をもっとも感謝すべき知人を現在に認め 【美果】びか ・味の良い果実 「―の核心に潜み隠れている一匹の美しい毒虫(押絵の奇蹟)」 ・良い結果。「―をもたらす」

才物

八軒長屋 著 村上浪六明治39年 馬鹿か抜け目のない才物か今更の金銭に関せぬ富貴名門か進退ここにきわまりし 【才物】さいぶつ 才能ある人物。才子。才人

内兜を見透かす

八軒長屋 著 村上浪六明治39年 もとより内兜を見透かせし屑屋の踏み倒しながら 【内兜を見透かす】うちかぶとをみすかす 相手の内情や弱点を見抜く。足もとを見る

十目の視る所十手の指す所

八軒長屋 著 村上浪六明治39年 相手は誰でしょう、近ごろ十目の見るところ長屋中の相場が既にきまりましたよ 【十目の視る所十手の指す所】じゅうもくのみるところじゅってのさすところ 大勢の人が一致して認めること

威儀を正す

八軒長屋 著 村上浪六明治39年 占めたと幸運斎、おもわず威儀を正して俄かに饒舌り出せし鼻頭へ、ぬッと立ちぬ 【威儀を正す】いぎをただす 身なりを整え重々しい態度を取る。威儀を繕う 「―したまま、いつまでもいつまでも(押絵の奇蹟)」 「諸天童子が―し…

他人の疝気を頭痛に病む

八軒長屋 著 村上浪六明治39年 安心なさいよ、どうも他の疝気を頭痛に病ンで、余計な口を出す奴が多くッてね、ははは 【他人の疝気を頭痛に病む】たにんのせんきをずつうにやむ 自分に関係ないことを心配するというたとえ。隣の疝気を頭痛に病む

扇影衣香

八軒長屋 著 村上浪六明治39年 夜は更けてのち、衣香扇影の春は夢と過ぎ去りし向島に、草葉の露の虫の音を哀れに 【扇影衣香】せんえいいこう 貴婦人が寄り集まる優雅な会合の様子

凡慮

八軒長屋 著 村上浪六明治39年 人間の凡慮を以ッて当たるべからざる大詩人には何の効もなく、ますます星影先生の熱度を高め 【凡慮】ぼんりょ 平凡な考え。また、凡人の考えること

言々句々

八軒長屋 著 村上浪六明治39年 はははは言々句々、実に愛すべき人だな、好意は謝するが、そう身にさわるほど 【言々句々】げんげんくく 一つ一つの言葉。一語一語

良夜

八軒長屋 著 村上浪六明治39年 自然の花は人工で出来ますまい、この良夜を奈何せんという清風明月に等しいもんだ 【良夜】りょうや 月の明るい夜。特に中秋名月の夜。(季)秋

獣欲

八軒長屋 著 村上浪六明治39年 なるほど恋を一時の獣欲に供して、無事息災に生きながら相別るるものに比して 【獣欲】じゅうよく 動物的な欲望。抑えのきかない性欲

大隠は市に隠る

八軒長屋 著 村上浪六明治39年 大隠は却ッて市井の巷にあり、大雅はむしろ俗臭の間にありとて、ますます 【大隠は市に隠る 】たいいんはいちにかくる 真の隠者は人里離れた山中になど隠れず、かえって俗人に交じり町で超然と暮らしているということ。大隠は…

轍鮒の急

八軒長屋 著 村上浪六明治39年 後日のため面白くないと考えたが、何分、その一週間のこっちが轍鮒の急でしょう 【轍鮒の急】てっぷのきゅう 差し迫った危機・困窮【轍鮒】てっぷ わだちの水溜りであえいでいるフナ。危急が差し迫っていることのたとえ▽

毒刃

八軒長屋 著 村上浪六明治39年 懐中より取り出して冷かなる微笑を浮かべながら、ぬッと毒刃の鋒鋩に等しく突き出しぬ 【毒刃】どくじん 凶悪な者の持つ刃物。凶刃。「―に倒れる」

淑徳

八軒長屋 著 村上浪六明治39年 少しも心に疚しくなくッてよ、淑徳の令夫人を犯すの罪は無くッよ、ははは 【淑徳】しゅくとく 女性の、しとやかで貞淑な徳

瑞雲

八軒長屋 著 村上浪六明治39年 やア熊さン、なんだか俄かに瑞雲がたなびくようですな、拝見かたがたお相手に出ましょうか 【瑞雲】ずいうん めでたいことの前兆として現れる雲。祥瑞(しょうずい)の雲

秋風落莫

八軒長屋 著 村上浪六明治39年 いでや秋風落莫の文壇に時ならぬ名花一輪の我あらしめんとの覚悟 【秋風落莫】しゅうふうらくばく 勢いがなくなり物寂しい様子。夏が過ぎ、秋の物寂しい風が吹くという意から 「なんとなくもの悲しくなって、―とうちしおれてい…

一掬の涙

八軒長屋 著 村上浪六明治39年 店の小僧が出逢いしという言葉に一掬の涙をそそいで、三円の菓子料を携えつつ 【一掬の涙】いっきくのなみだ 両手ですくうほどの大量の涙。またわずかな涙の意にも用いる 「アナタノタメニ―ナキヲ得マセン(蓼食う虫)」■