2015-01-01から1ヶ月間の記事一覧

謝絶

蒲団・重右衛門の最後 著 田山花袋1907年 1902年 発行 訪問して来るのを非常に不快に思うけれど、今更それを謝絶することも出来なかった 【謝絶】しゃぜつ 相手の申し入れを断ること。「要求を―する」

耳語

蒲団・重右衛門の最後 著 田山花袋1907年 1902年 発行 細君が、ふと、時雄に耳語した。「あなた、二階では、これよ」 【耳語】じご 相手の耳に口を当て小声で話すこと、また話。耳打ち

温順

蒲団・重右衛門の最後 著 田山花袋1907年 1902年 発行 温順な細君は徳利を取上げて、京焼の盃に波々と注ぐ 【温順】おんじゅん おとなしく素直なこと、さま

専心

蒲団・重右衛門の最後 著 田山花袋1907年 1902年 発行 今は少時沈黙して、お互に希望を持って、専心勉学に志し、いつか折を見て 【専心】せんしん 心を一つの事にだけ集中すること。専念 「人形であることに―しているような(ピカルディの薔薇)」 「ここで…

一伍一什 / 一五一十

蒲団・重右衛門の最後 著 田山花袋1907年 1902年 発行 逢って聞きますと、私の一伍一什を書いた手紙を見て、非常に心配して 【一伍一什 / 一五一十】いちごいちじゅう 一から十まで。始めから終りまで。一部始終

惑溺

蒲団・重右衛門の最後 著 田山花袋1907年 1902年 発行 渠は性として惑溺することが出来ぬ或る一種の力を有っている 【惑溺】わくでき 夢中になり、心を奪われること。「酒に―する」

例刻

蒲団・重右衛門の最後 著 田山花袋1907年 1902年 発行 時雄は例刻をてくてくと牛込矢来町の自宅に帰って来た 【例刻】れいこく ・いつもの決まった時刻 ・金銭や性など、はっきり口に出しかねる物事をさしていう語。あのこと、例のもの

高恩

蒲団・重右衛門の最後 著 田山花袋1907年 1902年 発行 自分の不束なこと、先生の高恩に報ゆることが出来ぬから自分は故郷に帰って 【高恩】こうおん 受けた大きな恩恵

風馬牛

蒲団・重右衛門の最後 著 田山花袋1907年 1902年 発行 夫の苦悶煩悶には全く風馬牛で、子供さえ満足に育てれば好いという自分の細君 【風馬牛】ふうばぎゅう ・牛や馬の雌雄が互いに慕い合っても会うことができないほど、遠く隔たっていること ・互いに無関…

縷々

蒲団・重右衛門の最後 著 田山花袋1907年 1902年 発行 時雄は芳子と父とを並べて、縷々として文学者の境遇と目的とを語り 【縷々】るる ・細く長く途切れることなく続くさま ・こまごまと詳しく述べるさま

文辞

蒲団・重右衛門の最後 著 田山花袋1907年 1902年 発行 幾らか罵倒的の文辞をも陳べて、これならもう愛想をつかして断念めて了うであろうと 【文辞】ぶんじ 文章。また、文章の言葉

開落

蒲団・重右衛門の最後 著 田山花袋1907年 1902年 発行 雨の点滴、花の開落などいう自然の状態さえ、平凡なる生活をして更に平凡ならしめるような 【開落】かいらく 花が開くこと、落ちること

日々夜々

みみずのたはこと 上 著 徳冨健次郎大正2年発表 俺の頭は、日々夜々に此青空の方へ伸びて行く。俺の足の下には大地がある 【日々夜々】にちにちやや 毎日毎晩 「それこそ―が、時々刻々が綱渡り(暢気眼鏡・虫のいろいろ 他十三篇)」

卑湿

みみずのたはこと 上 著 徳冨健次郎大正2年発表 蛭這い蛇寝床に潜る水国卑湿の地に住まねばならぬとなったら如何であろう 【卑湿】ひしつ/ひしゅう 土地が低くじめじめしていること、さま、そのような土地

畑水練

みみずのたはこと 上 著 徳冨健次郎大正2年発表 村の子供が大喜悦で、キャッキャ騒いで泳いで居る。本当の畑水練である 【畑水練】はたけすいれん 理屈ばかりで実地訓練に欠けるため、実際には役に立たないこと。畳水練

天穹

みみずのたはこと 上 著 徳冨健次郎大正2年発表 何の艶もない濁った煙色に化り、見る見る天穹を這い上り 【天穹】てんきゅう 大空。天空

水屑

みみずのたはこと 上 著 徳冨健次郎大正2年発表 気が変になり、帰国の船中太平洋の水屑になられたと聞いて居る 【水屑】みくず 水中のゴミ。「―となる(=水死する)」

佳人

みみずのたはこと 上 著 徳冨健次郎大正2年発表 新婦は初めて見た。眼のきれの長い佳人である 【佳人】かじん 美しい女性。美人 「―の結婚(最暗黒の東京)」

麦秋

みみずのたはこと 上 著 徳冨健次郎大正2年発表 六月になった。麦秋である 【麦秋】ばくしゅう/むぎあき 麦を取り入れる季節。初夏の頃。麦の秋。(季)夏

人木石にあらず

みみずのたはこと 上 著 徳冨健次郎大正2年発表 トルストイは一切の執着煩悩を軽々に滑り脱ける木石人で無い 【人木石にあらず】ひとぼくせきにあらず 人間は木や石と違って、みな喜怒哀楽の情を持っている 「コウ見エテモ必ズシモ木石漢ニ非ズ(蓼食う虫)」

和楽

みみずのたはこと 上 著 徳冨健次郎大正2年発表 主張を一切胸に畳んで、所謂家庭の和楽の犠牲となって一個の好々翁とし 【和楽】わらく 互いにうちとけ楽しむこと+

仁人

みみずのたはこと 上 著 徳冨健次郎大正2年発表 仁人としても詩人としても心の富、霊の自由、人格の尊厳を第一位に置く霊活不覊なる先生の心を 【仁人】じんじん 思いやりを備えた人。仁者

治産

みみずのたはこと 上 著 徳冨健次郎大正2年発表 先生が産を治むる事をやめられてから、一家の主人役に立たれたあなたが、児孫の為に 【治産】ちさん ・生計の道をたてること ・自分の財産を管理・処分すること

世故

みみずのたはこと 上 著 徳冨健次郎大正2年発表 世故を経尽し人事を知り尽した先生が、何故其老年に際し 【世故】せこ/せいこ 世間の俗事や習慣。世間の事情。「―に長ける」「―に暗い」

晩景

みみずのたはこと 上 著 徳冨健次郎大正2年発表 何故其生の晩景になって、あわれなひとり者の死に様をする為に其温かな巣からさまよい 【晩景】ばんけい ・夕方の景色 ・夕方

迂愚

みみずのたはこと 上 著 徳冨健次郎大正2年発表 われながらもどかしくてたまらぬ程の迂愚、編輯局の片隅に猫の如く小さくなって居た 【迂愚】うぐ 物事に疎く愚かなこと。愚鈍なこと、そのさま

鈍根

みみずのたはこと 上 著 徳冨健次郎大正2年発表 自分の様な鈍根の者は、一切を抛擲して先ず神を見る可く全力を傾注する勇気が無い、と 【鈍根】どんこん/どんごん 生まれつき頭の働きがにぶいこと。またそのような性質。⇔利根(りこん) 「俺のように―な(三太…

晩涼

みみずのたはこと 上 著 徳冨健次郎大正2年発表 夕飯のあと、晩涼に草とりして居た彼は、日は暮れる、ブヨは出る、手足を洗うて上ろうかと 【晩涼】ばんりょう 夕方の涼しさ。また涼しくなった夏の夕方。(季)夏

来遊

みみずのたはこと 上 著 徳冨健次郎大正2年発表 如何な黙契が出来たのか、白はあまり黒の来遊を拒まなくなった 【来遊】らいゆう 来て遊ぶこと。遊びに来ること

兵戈

みみずのたはこと 上 著 徳冨健次郎大正2年発表 彼の郷里の熊本は兵戈の中心となったので、家を挙げて田舎に避難したが 【兵戈】へいか ・槍や刀やほこ。転じて、武器 ・戦争。いくさ