2015-01-01から1ヶ月間の記事一覧

重囲

みみずのたはこと 上 著 徳冨健次郎大正2年発表 彼は奔り出したが、所詮此雷雨の重囲を脱けることは出来ぬと観念して、歩調をゆるめた 【重囲】じゅうい/ちょうい いくえにも取り囲むこと。またその囲み

熟路

みみずのたはこと 上 著 徳冨健次郎大正2年発表 府中まではざッと四里、これは熟路である。時計を見れば十一時 【熟路】じゅくろ 歩き慣れ、よく知っている道

鯨寄る浦、虎伏す野辺

みみずのたはこと 上 著 徳冨健次郎大正2年発表 あまり手荒い攻撃に、虎伏す野辺までもと跟いて来た糟糠の御台所も、ぽろぽろ涙をこぼす日があった 【鯨寄る浦、虎伏す野辺】いさなよるほ、こふすのべ 人跡未踏の地、未開な土地のこと

随喜

みみずのたはこと 上 著 徳冨健次郎大正2年発表 釣瓶なぞに随喜したが、此頃ではつい近所に来て泊っても寄っても往かなくなった 【随喜】ずいき ありがたく思い、大いに喜ぶこと

漂泊

みみずのたはこと 上 著 徳冨健次郎大正2年発表 また儂自身に漂泊の血をもって居ることを否むことは出来なかった 【漂泊】ひょうはく ・流れただようこと。「小舟が―する」 ・さまよい歩くこと。さすらうこと

風靡

みみずのたはこと 上 著 徳冨健次郎大正2年発表 儂に英語を教えさせ自身漢学を教え、斯くて千歳村を風靡する心算であったらしい 【風靡】ふうび 広範囲にわたってなびき従わせること。またなびき従うこと

葷酒山門に入るを許さず

みみずのたはこと 上 著 徳冨健次郎大正2年発表 然し葷酒(酒はおまけ)山門に入るを許したばかりで、平素の食料は野菜、干物、豆腐位 【葷酒山門に入るを許さず】くんしゅさんもんにはいるをゆるさず 葷酒(臭気の強い葱やニラなどの野菜と酒)は、修行の妨…

強健

みみずのたはこと 上 著 徳冨健次郎大正2年発表 碌々口もきけぬ脾弱い児であったが、此の頃は中々強健になった 【強健】きょうけん 体が強く丈夫であること。またそのさま

非望

みみずのたはこと 上 著 徳冨健次郎大正2年発表 儂は最初一の非望を懐いて居た。其は吾家の燈火が見る人の喜悦になれかしと謂うのであった 【非望】ひぼう 分不相応の大きな望み+

乃公

みみずのたはこと 上 著 徳冨健次郎大正2年発表 然し店硝子にうつる乃公の風采を見てあれば、例令其れが背広や紋付羽織袴であろうとも 【乃公】だいこう 一人称の人代名詞。男性が尊大に自分をさしていう語。我が輩

合評

何処へ・入江のほとり 著 正宗白鳥明治40年〜 個人展覧会の合評が終って、鉄三は旅の疲れもあるし、早目に寝床に就いたが 【合評】がっぴょう 何人かが集まって、ある作品・問題などについて批評し合う事、またその批評。レビュー

貧窶

何処へ・入江のほとり 著 正宗白鳥明治40年〜 この男一人が妻子もなく定職もなく、孤独貧窶の生活を続けて来たので 【貧窶】ひんる 非常に貧しいこと。また貧乏をしてやつれること 「―の境に沈淪して(蒲団・重右衛門の最後)」

子を見ること親に如かず

何処へ・入江のほとり 著 正宗白鳥明治40年〜 子を見る親に如かずか。父はかつて、私がRに似ていると云ったことがあった 【子を見ること親に如かず】こをみることおやにしかず 親は自分の子の性質や能力を一番よく知っている。子を知ること父に如かず 「わし…

常例

何処へ・入江のほとり 著 正宗白鳥明治40年〜 私は、春と秋とに故郷へ帰るのを常例としていた 【常例】じょうれい いつもの決まったやり方。いつもきまってすること。ならわし

傍人

何処へ・入江のほとり 著 正宗白鳥明治40年〜 医者が云っていた。」などと、傍人はささやき合った 【傍人】ぼうじん そばにいる人。また、そばにいるだけで直接関係しない人

空頼み

何処へ・入江のほとり 著 正宗白鳥明治40年〜 誰れでも知っていた。病人も知っていた。病人自身、空頼みをしなくなった 【空頼み】からだのみ/そらだのみ あてにならないことを頼りにすること。むなしい期待をすること。「―に終わる」 「元気が出たと思つた…

寿

何処へ・入江のほとり 著 正宗白鳥明治40年〜 旧家の老主人は、中風に罹ってから、なお十年の寿を保っていた 【寿】ことぶき ・祝いの言葉をいうこと、その言葉。ことほぎ。「―を述べる」 ・めでたいこと。よろこび。またその儀式。「―を成す」 ・命の長いこ…

傍らに人無きが如し

何処へ・入江のほとり 著 正宗白鳥明治40年〜 今までのように傍ら人無きが如き態度ではいられなくて、兄の足音が聞えると書物を脇へ片寄せた 【傍らに人無きが如し】かたわらにひとなきがごとし そばに誰もいないかのようにわがまま勝手に振る舞うさま。傍若…