2014-10-01から1ヶ月間の記事一覧

蓮歩

美しき町・西班牙犬の家 他六篇 著 佐藤春夫 春日のように遅々たる蓮歩で簇る瞳のなかをゆっくりとくぐり抜けた 【蓮歩】れんぽ 美人のあでやかな歩み。金蓮歩 「振袖を着て―楚々とカジノへ入って行くと(十蘭レトリカ)」

稚気

美しき町・西班牙犬の家 他六篇 著 佐藤春夫 広々とした中空の上の方に、一種愛すべき稚気を持ったマンネリズムで 【稚気】ちき 子供のような気分。子供っぽい様子。「―に富む」 「友人から、―もほどほどにせよ、と(暢気眼鏡・虫のいろいろ 他十三篇)」 「…

徒費

美しき町・西班牙犬の家 他六篇 著 佐藤春夫 その変人は巨額の尊い金を徒費して何のためにそんな 【徒費】とひ 金銭・時間・労力などを無駄に使うこと。またその使ったもの。浪費

善美

美しき町・西班牙犬の家 他六篇 著 佐藤春夫 一切の無用を去って、しかも善美を尽していなければいけない 【善美】ぜんび 物事がよく、美しいこと。立派で美しいこと、さま。「―を尽くした打掛」+

荷厄介

美しき町・西班牙犬の家 他六篇 著 佐藤春夫 それには今まで荷厄介にしていたこの絵具箱が、おれの泥棒ではないという証人として役立つであろう 【荷厄介】にやっかい 荷物を持てあますこと。転じて、物事が負担になること、さま 「半ばは心待ちにもし、半ば…

暗愁

小さき者へ生れ出ずる悩み 著 有島武郎1918年 発表 君は思わずため息をついた。言い解きがたい暗愁… 【暗愁】あんしゅう 心を暗くする悲しい物思い

平明

小さき者へ生れ出ずる悩み 著 有島武郎1918年 発表 日本語そのものよりももっと感情の表現の豊かな平明な言葉で自然が君に話しかける 【平明】へいめい ・わかりやすくはっきりしていること、さま ・夜明け。明け方

臼搗く/舂く

小さき者へ生れ出ずる悩み 著 有島武郎1918年 発表 西に舂きだすと日あしはどんどん歩みを早める 【臼搗く/舂く】うすずく ・穀物などを臼に入れて杵でつく ・夕日がまさに没しようとする

飽満

小さき者へ生れ出ずる悩み 著 有島武郎1918年 発表 その人たちが生に飽満して暮らすのはそれでいい。しかし君の周囲にいる人たちが 【飽満】ほうまん 飽きるほど食べて満腹すること。十分に満ち足りていること。飽食 「戦いに対する国民の―とを指摘して(機…

鬼一口

小さき者へ生れ出ずる悩み 著 有島武郎1918年 発表 つい気を許して少し大胆に高慢にふるまおうとする。と鬼一口だ。もうその人は地の上にはいない 【鬼一口】おにひとくち ・非常に危険なこと、尋常でない苦難 ・すばやく、たやすいこと

屏風倒し

小さき者へ生れ出ずる悩み 著 有島武郎1918年 発表 大きな音を立てて、紆濤(うねり)は屏風倒しに倒れかえる 【屏風倒し】びょうぶたおし 屏風のように仰向けて倒れる事。屏風返し

草する

小さき者へ生れ出ずる悩み 著 有島武郎1918年 発表 この書き物を草している部屋の隣りにお前たちは枕を列べて寝ているのだ 【草する】そうする 下書きする。原稿を書く 「半分―してあった或る物語の続きを(木乃伊の口紅・破壊する前)」

旅雁

小さき者へ生れ出ずる悩み 著 有島武郎1918年 発表 私は一人の病人と頑是ないお前たちとを労わりながら旅雁のように南を指して遁れなければならなくなった 【旅雁】りょがん 遠くへ飛んで行く雁

克明

小さき者へ生れ出ずる悩み 著 有島武郎1918年 発表 私がその町に住まい始めた頃働いていた克明な門徒の婆さんが病室の世話をしていた 【克明】こくめい ・細かいところまで念を入れ手落ちのないこと、さま。丹念 「しかし―に理解しはじめる(砂の女)」 ・真…

諸相

小さき者へ生れ出ずる悩み 著 有島武郎1918年 発表 その時から生活の諸相が凡て眼の前で変わってしまった 【諸相】しょそう いろいろな姿や様子。ありさま。「人生の―」「現代社会の―」 「世界をそのあるがままの―のままに肯定する(愛と認識との出発)」 「…

閲歴

あらくれ 著 徳田秋声1915年 発表 棄てて来た多くの女などに関する閲歴が、彼女の心を蕩かすような不思議な力をもっていた 【閲歴】えつれき ・人が今までたどってきた跡。経歴。履歴 ・経験すること

愛執

あらくれ 著 徳田秋声1915年 発表 出たときから、新しい愛執が盛返されて来たようなお島たちはそれでもその月は 【愛執】あいしゅう 愛するものに心がとらわれ離れられないこと。愛着

空闊

あらくれ 著 徳田秋声1915年 発表 空濶な平野には、麦や桑が青々と伸びて、泥田をかえしている農夫や馬の姿が、所々に見えた 【空闊】くうかつ 広々としていること、さま

矮林

あらくれ 著 徳田秋声1915年 発表 しっとりした空気や、広々と夷かな田畠や矮林が、水から離れていた魚族の水に返されたような 【矮林】わいりん 丈の低い木の林MMM

木香

あらくれ 著 徳田秋声1915年 発表 木組などの繊細いその家は、まだ木香のとれないくらいの新建であった 【木香】きが ・木材の香り ・酒に移った樽の香り

翠嵐

あらくれ 著 徳田秋声1915年 発表 梢からは、烟霧のような翠嵐が起って、細い雨が明い日光に透し視られた 【翠嵐】すいらん 青々とした山のたたずまい

藪畳

あらくれ 著 徳田秋声1915年 発表 藪畳を控えた広い平地にある紙漉場の葭簀に、温かい日がさして 【藪畳】やぶだたみ 一面に茂っている藪

恒産

もめん随筆 著 森田たま1936年 発表 当然のまはりあはせであつたが、恒産を持たぬ彼等は、やはり生活の保障を得るために 【恒産】こうさん ・一定の資産 ・安定した職

寒暑

もめん随筆 著 森田たま1936年 発表 つまり衣は寒暑をしのげば足り、住は雨露を防げば足るといふのです 【寒暑】かんしょ ・寒さと暑さ。「―の差が激しい」 「―をかまっていられない漁夫たちも(小さき者へ 生れ出ずる悩み)」 ・冬と夏

卓見

もめん随筆 著 森田たま1936年 発表 可愛がるといふ言葉を使つた叔母さんの卓見に私は感じ入つたのであつた 【卓見】たっけん 物事を正しく見通すすぐれた意見・見識。卓識

専横

もめん随筆 著 森田たま1936年 発表 さてその廿歳の頃、男は専横極まりなきものと思ひ暮らしながら 【専横】せんおう 好き勝手にふるまうこと、さま。わがまま。「―な友人」 「粗暴な行為となって―を行ったことなど(機械・春は馬車に乗って)」 「光崎の―と…

遺風

もめん随筆 著 森田たま1936年 発表 それがいまではただ遺風であるだけではなく、かへつて女にとつての新しい勢力となつて 【遺風】いふう ・まだ残っている昔の風習・習慣 ・残っている先人の教え

満腔

もめん随筆 著 森田たま1936年 発表 嫌はれてゐるとより見えない細君のために、満腔の同情を寄せるのであつた 【満腔】まんこう 体じゅう。満身。「―の敬意を表す」 「死にきれず、―のうらみを残し(十蘭レトリカ)」 「―の熱意をもって(うつろ舟)」 「―の…

星月夜

もめん随筆 著 森田たま1936年 発表 記憶のまちがひで、晴れた星月夜であつたかも知れないが、気持のうへではどうしても 【星月夜】ほしづきよ 晴れて星の光が月のように明るい夜。(季)秋 「秋の或る晩はっきりした―に(美しき町・西班牙犬の家 他六篇)」…

烏兎怱々

もめん随筆 著 森田たま1936年 発表 烏兎怱々月は河水のやうに流れ、永久に会へない昨日と明日の間にはさまれて 【烏兎怱々】うとそうそう 月日の経つのが早いさま