季節・天候

一季

ピカルディの薔薇 著 津原泰水2006年11月 発行 その家に預けられていた一季がある 【一季】いっき ・春夏秋冬のいずれか一つの季節 ・江戸時代、一年を単位とする奉公人の契約期間、また一年

反照

忌中 著 車谷長吉2003年 発行 海面から夕映えの反照は消え、青みがかった暗い色が濃くなっていた 【反照】はんしょう ・照り返すこと。またその光。照り返し ・夕日に照り輝くこと。夕映え ・ある物事の影響が具体的な形で他のものの上に現れることOOO

慈雨

夜の淵をひと廻り 著 真藤順丈2016年1月31日 発行 面影は残っているだろうか、慈雨を待つ陰日向の花のような 【慈雨】じう 万物を潤し育てる雨。また、日照りの時に降る雨。恵みの雨。(季)夏

五月闇

うつろ舟 著 渋澤龍彦1986年 発行 海のほうを透かして見た。星も出ていない五月闇である 【五月闇】さつきやみ 陰暦5月(新暦で5月下〜7月中)の、梅雨が降るころの夜の暗さ、その暗やみ。(季)夏

浅春

うつろ舟 著 渋澤龍彦1986年 発行 いまから二年ほど前、季節は浅春に属していたが 【浅春】せんしゅん 春の初め。早春。(季)春

月明

にぎやかな落葉たち 著 辻真先2015/2/18 発行 月明の路傍に、ぽつねんと残っているのは、四角いビニール包みであった 【月明】げつめい 月の明るいこと。明るい月の光。月明かり。(季)秋

天象

最暗黒の東京 著 松原岩五郎明治25年ごろ 千夜に一夜の風流として偶然の天象を楽むには、この上もなき娯戯なれども 【天象】てんしょう ・日、月、星などに見られる現象。天体の現象 ・空模様

急霰

或る少女の死まで 他二篇 著 室生犀星 その烈しい急霰の落ちようは人の話し声も聞えないほどさかんで 【急霰】きゅうさん にわかに降ってくるあられ。その音。(季)冬BBB

良夜

八軒長屋 著 村上浪六明治39年 自然の花は人工で出来ますまい、この良夜を奈何せんという清風明月に等しいもんだ 【良夜】りょうや 月の明るい夜。特に中秋名月の夜。(季)秋

月暈

煤煙 著 森田草平1910年〜 濃い湯気の玉がその前をぐるぐると廻って、月暈のやうな輪をゑがく 【月暈】げつうん/つきがさ 月の周りに見える光の環 「まわりに暖かそうな―が銀を燻したように霞んで(黒髪・別れたる妻に送る手紙)」 (参考:http://ja.wikipe…

夜深

煤煙 著 森田草平1910年〜 それ持つて夜深に雨傘を指して、角の郵便函迄入れに行った 【夜深】よぶか 夜が深まったこと。夜更け。またそのさま

秋光

地上―地に潜むもの 著 島田清次郎1919年発行 体操の教師と、沈黙している校長と国語の教師とに朝の秋光が薄らに射していた 【秋光】しゅうこう 秋の景色。秋の日ざし。秋色。(季)秋

余炎

地上―地に潜むもの 著 島田清次郎1919年発行 昼の余炎はまださめ切らなかったが、野面をわたる風は寒かった 【余炎】よえん ・消え残りのほのお ・夏の終わりのころの暑さ。残暑

星辰

地上―地に潜むもの 著 島田清次郎1919年発行 西洋の耶蘇が生まれたときには空の星辰が一時に輝いて祝福したというが 【星辰】せいしん 星。星座

烈日

地上―地に潜むもの 著 島田清次郎1919年発行 真夏の濃緑と烈日が彼女にある圧迫を与えたが、静かな彼女の心はそっと 【烈日】れつじつ 激しく照りつける夏の太陽。また、その光

麦秋

みみずのたはこと 上 著 徳冨健次郎大正2年発表 六月になった。麦秋である 【麦秋】ばくしゅう/むぎあき 麦を取り入れる季節。初夏の頃。麦の秋。(季)夏

晩景

みみずのたはこと 上 著 徳冨健次郎大正2年発表 何故其生の晩景になって、あわれなひとり者の死に様をする為に其温かな巣からさまよい 【晩景】ばんけい ・夕方の景色 ・夕方

晩涼

みみずのたはこと 上 著 徳冨健次郎大正2年発表 夕飯のあと、晩涼に草とりして居た彼は、日は暮れる、ブヨは出る、手足を洗うて上ろうかと 【晩涼】ばんりょう 夕方の涼しさ。また涼しくなった夏の夕方。(季)夏

星月夜

もめん随筆 著 森田たま1936年 発表 記憶のまちがひで、晴れた星月夜であつたかも知れないが、気持のうへではどうしても 【星月夜】ほしづきよ 晴れて星の光が月のように明るい夜。(季)秋 「秋の或る晩はっきりした―に(美しき町・西班牙犬の家 他六篇)」…

短夜

冥途・旅順入城式 著 内田百輭1922年 発表 そのうち不意に、短か夜が明け離れた。黄色い朝日がぎらぎらと輝いて 【短夜】みじかよ 短い夜。夜明けの早い夏の夜。(季)夏

凜冽/凜烈

鍵・瘋癲老人日記 著 谷崎潤一郎 外ヲ見タラ美シイ星空デアッタガ寒気ハ凜烈デアッタ 【凜冽/凜烈】りんれつ 寒気の厳しいさま

徹宵

一の糸 著 有吉佐和子1965年 発行 一室を借りきっていて、徹宵して相談や懇談や鳩首会議を続けているのを 【徹宵】てっしょう 夜どおし起きていること。また、夜どおし、一晩中

酷熱

夜光虫 著 森瑤子 集英社 1983年 湿度の高い暑さとは異なる、眼に刺さるような酷熱であった。 【酷熱】こくねつ 非常に厳しい暑さ。「―の砂漠」

ひもすがら

はなとゆめ 著 冲方丁角川書店 2013/11/6 発行 わたしだけでなく、ひもすがら家の中にいて、ただ訪れる者を待つほかない女 【ひもすがら】 朝から晩まで。一日中。終日。ひねもす 「僕は―ダイニングテーブルでワープロと格闘し(この女)」

冷涼

ホテルローヤル 著 桜木紫乃集英社 2013/1/10 発行 せっかく拓いた土地は冷涼な気候のせいで農作物も育たず、 【冷涼】れいりょう ひんやりとして涼しいこと、さま

暮夜

春の雪 著 三島由紀夫 1965年発行 早速洞院宮の御都合を伺って、暮夜、御殿に参上した 【暮夜】ぼや 夜になった時。夜。夜分

短日

春の雪 著 三島由紀夫 1965年発行 よもやまのお話をしているうちに、短日は暮れた。 【短日】たんじつ 日照時間の短い、冬の日。(季)冬

叢林

春の雪 著 三島由紀夫 1965年発行 沼を囲む叢林へ下りる径がついていた。 【叢林】そうりん ・樹木が群がって生えている林 ・大きな寺院。特に禅寺。禅林

陽春

壺中の回廊 著 松井今朝子 集英社 2013/6/30 発行 火の気がまったくないのは陽春でもさすがに厳しいものがある 【陽春】ようしゅん ・暖かい春 ・陰暦正月の異称

三伏

文鳥・夢十夜・永日小品 著 夏目漱石 あたかも三伏の日に照り付けられた焼け石が、緑の底に空を映さぬ暗い池へ、落ち込んだようなものだ 【三伏】さんぷく 夏のもっとも暑い時期。(季)夏SSS