慣用句・言い回し

一臂の力を貸す

牛肉と馬鈴薯 著 国木田独歩明治35年ごろ〜 どうかあなたも自分のため一臂の力を借して、老先生のほうをうまく説いてもらいたい 【一臂の力を貸す】いっぴのちからをかす 少しの助力を与える

一場の夢

うつろ舟 著 渋澤龍彦1986年 発行 消滅してしまうと、たったいまのけしきは一場の夢のようで 【一場の夢】いちじょうのゆめ 春夜に見る短い夢のように儚いこと。一場の春夢(しゅんむ)△

斎戒沐浴

うつろ舟 著 渋澤龍彦1986年 発行 斎戒沐浴した藤原家のうら若い二十人の姫君の手によって 【斎戒沐浴】さいかいもくよく 飲食や行動を慎み、体を洗って穢れをはらうこと

議論百出

うつろ舟 著 渋澤龍彦1986年 発行 一座はにわかに活気づいて、たちまち意見百出、蜂の巣をつついたような 【議論百出】ぎろんひゃくしゅつ さまざまな意見が出され、活発に議論されること、さま 「会議は―し、もめにもめた(鏡陥穽)」

烏有に帰す

うつろ舟 著 渋澤龍彦1986年 発行 屋敷は留守中に火事をおこし、烏有に帰してしまったという 【烏有に帰す】うゆうにきす すっかりなくなる。特に、火災で焼けることをいう 「―した協会は駐車場に変わり(夜の淵をひと廻り)」

聞こし召す

うつろ舟 著 渋澤龍彦1986年 発行 女もだいぶ聞こめしていたから、玉山はまさに崩れんばかりであった 【聞こし召す】きこしめす ・酒を飲むことを戯れていう。「だいぶ―して赤い顔をしている」 「少々―している場合が多い(沙羅は和子の名を呼ぶ)」 ・「飲…

旗を巻く

うつろ舟 著 渋澤龍彦1986年 発行 いくさに厭きて旗を巻いたために、瀬戸内の海の往来がふたたび 【旗を巻く】はたをまく 旗を下ろして巻き収める。降参する。また、事を中止したり、手を引いたりする

薄志弱行

うつろ舟 著 渋澤龍彦1986年 発行 ここの家はまさに、おのれの薄志弱行を一時的に忘れさせてくれる 【薄志弱行】はくしじゃっこう 意志が弱く、実行力に乏しいこと

久闊を叙する

うつろ舟 著 渋澤龍彦1986年 発行 それでも五年ぶりの久闊を叙したふたりであっただけに 【久闊を叙する】きゅうかつをじょする 無沙汰を詫びる。久しぶりに友情を温める。「互いに―する」【久闊】きゅうかつ 久しく会わないこと。無沙汰。「―をわびる」

殺生は八分の損、見るは十分の損

うつろ舟 著 渋澤龍彦1986年 発行 狂いまいらせるわけですから、殺生は八分の損、見るは十分の損と申しますが 【殺生は八分の損、見るは十分の損】せっしょうははちぶのそん、みるはじゅうぶのそん 殺生をする者に良いことはないが、それを見て喜ぶ者には一…

人面獣心

この女 著 森絵都2011年 発行 食いものにしていた人面獣心の面影は見られない 【人面獣心】にんめんじゅうしん 顔は人間だが、心はけだものに等しいこと。恩義や人情を知らぬ者、冷酷非情な者のたとえ。ひとでなし

一頭地を抜く

この女 著 森絵都2011年 発行 存在感がほかの女友達よりも一頭地を抜いているのを自覚していった 【一頭地を抜く】いっとうちをぬく 他の人よりひときわ優れている。一頭地を出(い)だす

盤根錯節

この女 著 森絵都2011年 発行 盤根錯節を断じて人生の逆転に成功し、金色のジャガーに乗って迎えにくる 【盤根錯節】ばんこんさくせつ ・曲がりくねった根と、入り組んだ節 ・複雑で、解決困難な事柄。「派閥間の―を処断する」

実践躬行

この女 著 森絵都2011年 発行 身をもって労働を体験せな。実践躬行ちゅうやっちゃ 【実践躬行】じっせんきゅうこう 実際に自分自身で行うこと

紺屋の白袴

悪女について 著 有吉佐和子1978年 発行 レディス・クラブがあるのにね。紺屋の白袴だわ 【紺屋の白袴】こうやのしろばかま 紺屋が自分の袴は染めないで白袴をはいていること。他人のことに忙しく、自分のことには手が回らないたとえ

尾羽うち枯らす

悪女について 著 有吉佐和子1978年 発行 敗戦で尾羽うち枯らしてしまっている。売れるものを何とか家の中で見つけ出し 【尾羽うち枯らす】おはうちからす 落ちぶれて、みすぼらしい姿になる。尾羽うち枯れる

雲を霞と

悪女について 著 有吉佐和子1978年 発行 輝彦の奴は雲を霞と逃げちまってよ 【雲を霞と】くもをかすみと 一目散に走って行方をくらますさま

追い使う

悪女について 著 有吉佐和子1978年 発行 掃除まで私にさせるんだよ。中学生の君子まで追い使ってさ 【追い使う】おいつかう 休む暇もなくこき使うこと。追いかけまわすように使うこと

氏無くして玉の輿

悪女について 著 有吉佐和子1978年 発行 男を見つけて結婚すればよ、女は氏なくして玉の輿だから」「私、氏は、あるのよ。 【氏無くして玉の輿】うじなくしてたまのこし 女性は家柄がよくなくても器量次第で、富貴な人の愛を得て高い位置に上れるということ

木戸を突く

悪女について 著 有吉佐和子1978年 発行 そやさかい上流階級から木戸をつかれるのは仕方がないとは思いますよ 【木戸を突く】きどをつく 興行場で、入場を拒む

七所借り

悪女について 著 有吉佐和子1978年 発行 買えと言いますでしょ。私、八所借りして算段いたしますから 【七所借り】ななところがり/ななとこがり あちこちから金品を借り集めること

一盗二卑三妾四妓五妻

悪女について 著 有吉佐和子1978年 発行 でも、一盗二卑三妾なんて申しますでしょ。だから兄も、ちょっと気が動いたんじゃ 【一盗二卑三妾四妓五妻】いっとう にひ さんしょう しぎ ごさい 男性が欲情する対象を順に表したたとえ。盗は人妻、卑は下女、妾は…

忙中閑あり

妖都 著 津原泰水1977/11 発行 岳雪はいつものように飄逸な口調で、「忙中閑ありというやつで 【忙中閑あり】ぼうちゅうかんあり 忙しい中にも僅かな暇はあるものである

鬼面人を威す

妖都 著 津原泰水1977/11 発行 ごく断片しか頭に残っていないが、鬼面人を威す類の羅列以上の印象はなく 【鬼面人を威す】きめんひとをおどす 見せかけだけ恐ろしそうにして人をおどかす。鬼面人を驚かす●

功成り名遂げる

ヒポクラテスの誓い 著 中山七里2015/5/14 発行 功成り名遂げた大学教授でもあり医師でもある二人が 【功成り名遂げる】こうなりなとげる 立派な仕事を成し遂げ、世間的な名声を得る

眼鏡違い

ヒポクラテスの誓い 著 中山七里2015/5/14 発行 見る目も不十分で、しょっちゅう眼鏡違いをやらかす 【眼鏡違い】めがねちがい 人物など、良し悪しの判断を誤ること。「彼の採用は―だった」

八万奈落

押絵の奇蹟 著 夢野久作 八万奈落の涯をさまよいつつ浮ぼうとして浮び得ぬ幽鬼の声・・・ 【八万奈落】はちまんならく 仏語。煩悩のために受ける数多くの苦しみ。八万地獄

千軍万馬

押絵の奇蹟 著 夢野久作 そこは千軍万馬の陰謀政治家だけあって、グングンと二人に逆襲し始めた 【千軍万軍】せんぐんばんば ・多くの軍兵と軍馬 ・戦闘の経験が豊富であること。転じて、社会経験などを多くつんでいること。「―の猛者」□

屠所の羊

押絵の奇蹟 著 夢野久作 イヤに長い午後の時間を考えながら、屠所の羊よりもモット情けない恰好で 【屠所の羊】としょのひつじ 屠所に引かれていく羊。刻々と死に近づいているたとえ。また、不幸にあって気力をなくしていることのたとえ 「僕は浮かれるどこ…

疾風迅雷

押絵の奇蹟 著 夢野久作 処刑するまでの馬力がトテモ猛烈で、疾風迅雷式をきわめているからであった 【疾風迅雷】しっぷうじんらい 激しい風と雷。事態の変化が急なこと、行動が迅速なことなどをたとえる。「―の攻撃」