2014-01-01から1年間の記事一覧

諧調

猫町 他十七篇 著 萩原朔太郎 往来で立話をしている人たちも、皆が行儀よく、諧調のとれた低い静かな声で話をしていた 【諧調】かいちょう 調和のよくとれた音、調子。全体がしっくり溶け合った調子

人馬

猫町 他十七篇 著 萩原朔太郎 そして最後に、漸く人馬の足跡のはっきりついた、一つの細い山道を発見した 【人馬】じんば ・人と馬 ・腰から上が人間、下が馬という架空の動物

口碑

猫町 他十七篇 著 萩原朔太郎 雲を見ながら、この地方の山中に伝説している、古い口碑のことを考えていた 【口碑】こうひ 古くからの言い伝え。伝説。「―に残る悲話」 「彼らが語りつぐ―によれば(本にだって雄と雌があります)」 「高潮の―があることも分か…

花客

美しき牢獄 著 素木しづ1918年 発表 いつも買つて行つた。店にとつては非常にいいお花客であつた 【花客】かかく ・花を見る人。花見客 ・贔屓の客。得意客。華客 「叔父の上―(じょうとくい)になっている田舎の田地持ち(瓶詰の地獄)」

世才

美しき牢獄 著 素木しづ1918年 発表 誠二は頭がよかった。そしてよく世才にたけて人の心を見ることが出来た 【世才】せさい 世の中の事情に通じ、たくみに世渡りのできる才能。世故の才 「不得手ながら時にとッての―を絞り出して笑えば(八軒長屋)」

純一

愛と認識との出発 著 倉田百三1921年 発表 思想的に未熟と誤謬とを含んでいる場合にも、純一ならぬ軽雑な何ものをもインフェクトせぬであろう 【純一】じゅんいつ まじりけのないこと。飾りや嘘偽りがないこと、さま。「―な人柄」

忍受

愛と認識との出発 著 倉田百三1921年 発表 不幸に打たれて、しかもそれに抵抗する気のきわめて少なくなっている忍受の心 【忍受】にんじゅ 耐え忍び受け入れること。「屈辱を―する」

天与

愛と認識との出発 著 倉田百三1921年 発表 私の心の内に天与の人懐かしさがある 【天与】てんよ 天から与えられたもの。天のたまもの。天賦

隠忍

愛と認識との出発 著 倉田百三1921年 発表 あの「ピルグリム・プログレス」の巡礼の持つ隠忍にして撓まぬ努力の精神 【隠忍】いんにん 苦しみを隠して堪え忍ぶこと。「―に―を重ねる」

陰森

愛と認識との出発 著 倉田百三1921年 発表 丑の時参りの陰森なる灯の色を思う 【陰森】いんしん ・樹木が生い茂って暗いさま ・薄暗くてもの寂しいさまMMM

糜爛

愛と認識との出発 著 倉田百三1921年 発表 その万物を糜爛せしめるような陰鬱な雨は今日も今日もと降りつづいた 【糜爛】びらん ただれ崩れることTTT

熱涙

愛と認識との出発 著 倉田百三1921年 発表 深大なる価値をこの接触の上に払い、互いに熱涙を注いで喜んだであろう 【熱涙】ねつるい 感動のあまりこぼす、あつい涙。「―にむせぶ」

純乎

愛と認識との出発 著 倉田百三1921年 発表 男女の恋にも勝りていかに纏綿として離れがたく、純乎として清きよ 【純乎】じゅんこ まじりけの全くないさま

長逝

愛と認識との出発 著 倉田百三1921年 発表 去年の夏、チョコルアの別荘で忽然と長逝せられたのであった 【長逝】ちょうせい 死ぬこと。永眠。逝去

活計

木乃伊の口紅・破壊する前 著 田村俊子1912年〜 発表 才の薄い文筆によって活計の料を得ながら、優子は猶健気な自分の 【活計】かっけい ・暮らしを営むこと。またその手段。生計。「―を立てる」 「健康やら―上の都合やらで(煤煙)」 「それで生涯の―を立て…

予示

木乃伊の口紅・破壊する前 著 田村俊子1912年〜 発表 宏三はある予示を得たような閃きを含んだ眼をして竜子を見返ったが 【予示】よじ 前もって示すこと。前触れ

透徹

木乃伊の口紅・破壊する前 著 田村俊子1912年〜 発表 つい今まで何も見えなかった透徹した空間が灰のようにこまかい雪で埋まっていた 【透徹】とうてつ ・澄みきっていること。透き通っていること。「―した空」 「嵐の前の静寂が天地をこめて―していた(地上…

窮乏

木乃伊の口紅・破壊する前 著 田村俊子1912年〜 発表 世間を相手にして自分たちの窮乏を曝さなければならない樣な羽目になると 【窮乏】きゅうぼう 金銭や物品が著しく不足して苦しむこと 「僕は物質の―などというものが(猫町 他十七篇)」 「戦後の―の中で…

暗愚

美しき町・西班牙犬の家 他六篇 著 佐藤春夫 この暗愚カンカラコボシめ。誰がただでかえしてくれるものか 【暗愚】あんぐ 物の是非を判断する力がなく、愚かしいこと、さま

得たり賢し

美しき町・西班牙犬の家 他六篇 著 佐藤春夫 用意のないカンカラコボシに得たり畏しとばかりしてやられるというのである 【得たり賢し】えたりかしこし 思い通りになったときの喜びの気持ちを表す語。しめた!うまくいった!

阿諛

美しき町・西班牙犬の家 他六篇 著 佐藤春夫 教授の不和は次々に教授に阿諛する一部の医局員の不和を誘引し 【阿諛】あゆ 顔色を見て、相手の気に入るようふるまう事。お追従TTT

有為

美しき町・西班牙犬の家 他六篇 著 佐藤春夫 地方の資産家の長女だが、有為の青年学者を婿にして大成させたいと 【有為】ゆうい 能力があること。役に立つこと、さま。「―な人材」 「貴方の―な前途(瓶詰の地獄)」

順境

美しき町・西班牙犬の家 他六篇 著 佐藤春夫 幼くから幸福のなかで温室の花として養育されて、それ故順境に置かれればいくらでも優しくなり得る代わりには 【順境】じゅんきょう 物事が都合よく運んでいる境遇。「―のうちに育つ」

蓮歩

美しき町・西班牙犬の家 他六篇 著 佐藤春夫 春日のように遅々たる蓮歩で簇る瞳のなかをゆっくりとくぐり抜けた 【蓮歩】れんぽ 美人のあでやかな歩み。金蓮歩 「振袖を着て―楚々とカジノへ入って行くと(十蘭レトリカ)」

稚気

美しき町・西班牙犬の家 他六篇 著 佐藤春夫 広々とした中空の上の方に、一種愛すべき稚気を持ったマンネリズムで 【稚気】ちき 子供のような気分。子供っぽい様子。「―に富む」 「友人から、―もほどほどにせよ、と(暢気眼鏡・虫のいろいろ 他十三篇)」 「…

徒費

美しき町・西班牙犬の家 他六篇 著 佐藤春夫 その変人は巨額の尊い金を徒費して何のためにそんな 【徒費】とひ 金銭・時間・労力などを無駄に使うこと。またその使ったもの。浪費

善美

美しき町・西班牙犬の家 他六篇 著 佐藤春夫 一切の無用を去って、しかも善美を尽していなければいけない 【善美】ぜんび 物事がよく、美しいこと。立派で美しいこと、さま。「―を尽くした打掛」+

荷厄介

美しき町・西班牙犬の家 他六篇 著 佐藤春夫 それには今まで荷厄介にしていたこの絵具箱が、おれの泥棒ではないという証人として役立つであろう 【荷厄介】にやっかい 荷物を持てあますこと。転じて、物事が負担になること、さま 「半ばは心待ちにもし、半ば…

暗愁

小さき者へ生れ出ずる悩み 著 有島武郎1918年 発表 君は思わずため息をついた。言い解きがたい暗愁… 【暗愁】あんしゅう 心を暗くする悲しい物思い

平明

小さき者へ生れ出ずる悩み 著 有島武郎1918年 発表 日本語そのものよりももっと感情の表現の豊かな平明な言葉で自然が君に話しかける 【平明】へいめい ・わかりやすくはっきりしていること、さま ・夜明け。明け方