2012-05-01から1ヶ月間の記事一覧

おぐらい

蛇を踏む 著 川上弘美 文芸春秋 1996/8 発行 家の中はおぐらくなる。おぐらい家の中でヒロ子さんの家族は 【小暗い】 薄暗い。少し暗い。「―道」

ぎゅうひ

蛇を踏む 著 川上弘美 文芸春秋 1996/8 発行 その兄が毎日のように餡やぎゅうひを食べるようになるのだから 【求肥】ぎゅうひ 和菓子の材料の一種で、練った餅状のもの。羽二重餅や生八橋など

めくら滅法

蛇を踏む 著 川上弘美 文芸春秋 1996/8 発行 天井といわず床下といわず、めくら滅法走りまわったのである。 【めくら滅法】めくらめっぽう わけもわからず、やみくもに事を行うこと 「不器用で―な行為にたいしてさえ(砂の女)」

蔬菜

蛇を踏む 著 川上弘美 文芸春秋 1996/8 発行 夫は蔬菜の仕事で大きな企画をたてて採用されたし 【蔬菜】そさい 野菜。青物 「裏庭の―園から(黒死館殺人事件)」

月下氷人

蛇を踏む 著 川上弘美 文芸春秋 1996/8 発行 私の家族の月下氷人を何回もつとめた笹島のテンさん 【月下氷人】げっかひょうじん 男女の縁を取り持つ人。仲人 「―(なかうど)なんかの必要なんかは、全然ない(美しき牢獄)」 「恋の証人として一面―の役目を…

散逸

蛇を踏む 著 川上弘美 文芸春秋 1996/8 発行 祖母の書き留めたものも大部分が散逸したり消耗したり 【散逸】さんいつ まとまっていた書物などが、ばらばらになって行方不明になること。散失 「いつの間にか―してしまっていた(感染広告)」 「―するのを恐れ…

円環

蛇を踏む 著 川上弘美 文芸春秋 1996/8 発行 その繰り返しが円環のようにカナカナ堂を取り巻き、それでも 【円環】えんかん まるい環。まるく連なっている形 「―の時の物語(ことば汁)」

大黒

蛇を踏む 著 川上弘美 文芸春秋 1996/8 発行 住職にどことなく似た顔の大黒さんが昼御飯にと蕎麦を運んできて 【大黒】だいこく ・七福神の一人、大黒天 ・僧侶の妻。

霧笛

蛇を踏む 著 川上弘美 文芸春秋 1996/8 発行 ダンプカーの警笛が汽船の霧笛のように聞こえる。 【霧笛】むてき 視界が不良のときに衝突事故を防ぐため、船舶や灯台などが鳴らす汽笛。きりぶえ

零落

蛇を踏む 著 川上弘美 文芸春秋 1996/8 発行 金持ちだったのが掘っ立て小屋にも住めなくなった零落者と 【零落】れいらく ・落ちぶれること。「―して見る影もない」 「―した男をたてすごすのは本妻より(もめん随筆)」 ・草木の枯れ落ちること

糊塗

新月譚 著 貫井徳郎 文芸春秋 2012/4/10 発行 優しさで糊塗された感想は、もう聞きたくなかった。 【糊塗】こと 一時しのぎでごまかすこと。「過失を―する」 「薬デ一時ヲ―ナサルヨリ方法ハ(鍵・瘋癲老人日記」 「白人優先の事実を―するために(ラザロ・ラ…

営為

新月譚 著 貫井徳郎 文芸春秋 2012/4/10 発行 わたしはこれからも小説を描き続けていくだろう。たとえそれが蟻の営為に等しくても、 【営為】えいい 日々いとなむ仕事や生活。いとなみ

克己心

新月譚 著 貫井徳郎 文芸春秋 2012/4/10 発行 木之内の克己心と気遣いに感嘆する。 【克己心】こっきしん 自身の欲望や邪念を抑える心。自制心 「会うまいとしているのは、克己のためでもなければ(春の雪)」

同工異曲

新月譚 著 貫井徳郎 文芸春秋 2012/4/10 発行 一作目と同工異曲のサクセスストーリーだったが 【同工異曲】どうこういきょく 見た目は違っているが、中身は同じであること

困じ果てる

新月譚 著 貫井徳郎 文芸春秋 2012/4/10 発行 山口さんは困じ果てたように、眉根を寄せた。 【困じ果てる】こうじはてる 困りはてる。判断に苦しむ

卒然

新月譚 著 貫井徳郎 文芸春秋 2012/4/10 発行 そこまで考えて、ある回想が卒然と脳裏に甦った。 【卒然】そつぜん だしぬけに。突然 「すると彼は―(こころ)」 「新俳優は―として起りし一代の富豪に等しく(八軒長屋)」 「この日のためだったということが―…

徒手

新月譚 著 貫井徳郎 文芸春秋 2012/4/10 発行 徒手空拳で闘いに挑んで敗れ去るのは愚か者のすることである。 【徒手】としゅ ・素手、手ぶらであること ・自分の力以外に頼るものが一切ないこと 徒手空拳(としゅくうけん)

勘気

新月譚 著 貫井徳郎 文芸春秋 2012/4/10 発行 今度こそ勘気を蒙るかもしれないという不安はあった。 【勘気】かんき 目上の人からとがめを受けること。「―に触れる」 「話し込んでいたというより、あれは―を被っていたのだろう(茗荷谷の猫)」

怨ずる

新月譚 著 貫井徳郎 文芸春秋 2012/4/10 発行 「そんなおばあさんじゃないわよ」と怨じるように言う。 【怨ずる】えんずる うらみごとを言う。うらむ

スノビッシュ

新月譚 著 貫井徳郎 文芸春秋 2012/4/10 発行 文学作品だけを尊ぶようなスノビッシュな読書はしていなかった。 【スノビッシュ】 上品ぶった。教養や知識などを鼻にかけた。気取った

閨秀

新月譚 著 貫井徳郎 文芸春秋 2012/4/10 発行 美人閨秀作家の上に、どんな年輪を刻んだのか。 【閨秀】けいしゅう 学問や芸術などに優れている女性。「―の誉れ高い」 「当選して、一躍、新進―画家の列に入り(花物語)」 「ヴィクトリア朝の―詩人たち(潮騒…

貪婪

檸檬 著 梶井基次郎 1925年 発行 桜の根は貪婪な蛸のように、それを抱きかかえ、いそぎんちゃくの食糸のような毛根を聚めてその液体を吸っている 【貪婪】どんらん・たんらん ひどく欲深いこと、さま 「それなのにどこか―なものが、潜んでいる(甘い蜜の部屋…

死灰

檸檬 著 梶井基次郎 1925年 発行 燃えた雲はまたつぎつぎに死灰になりはじめた。 【死灰】しかい 火の気のなくなった、冷たい灰。転じて、生気のないもののたとえ 「―の文字をほじくっているのだ(何処へ・入江のほとり)」

風狂

檸檬 著 梶井基次郎 1925年 発行 彼は窓際に依って風狂というものが存在した古い時代のことを思った。 【風狂】ふうきょう ・気が狂うこと。常軌を逸していること ・風雅がきわまって、他を顧みないこと、人

凄然

檸檬 著 梶井基次郎 1925年 発行 尭はそれを読んである考えに悽然とした。 【凄然】せいぜん ・大変にもの寂しい感じがするさま ・寒い、冷たい、涼しいさま

門辺

檸檬 著 梶井基次郎 1925年 発行 地盤の低い家々の庭や門辺に立っている木々の葉が一日ごと剥がれてゆくさまが見えた 【門辺】かどべ 門のそば。門のあたり

激浪

檸檬 著 梶井基次郎 1925年 発行 その時刻の激浪に形骸の翻弄を委ねたまま、K君の魂は月へ月へ、飛翔し去ったのであります。 【激浪】げきろう 荒々しくてはげしい波。転じて、勢いのはげしいことを指す

天心

檸檬 著 梶井基次郎 1925年 発行 天心をやや外れた月が私の歩いて行く砂の上にも一尺ほどの影を作っていました。 【天心】てんしん 空の真ん中。中天 「東に、西に、―に、ず、ずうと広がって来た(みみずのたはこと 上)」

錯落

檸檬 著 梶井基次郎 1925年 発行 錯落とした松樹の影を踏みながら砂浜へ出て行きました。 【錯落】さくらく 入り混じること、さま 「金銀朱紫の色の―する間に(冥途・旅順入城式)」

風樹

檸檬 著 梶井基次郎 1925年 発行 楓樹の肌が冷えていた。 【風樹】ふうじゅ ・風に吹かれて揺れている木。風木