2012-01-01から1年間の記事一覧

情火

真珠夫人 著 菊池寛 1920年〜 陶酔の醒め際に、彼の烈しい情火が、ムラムラと彼の身体全体を、嵐のように包むのだった 【情火】じょうか 燃えるように高ぶる情欲

良風美俗

真珠夫人 著 菊池寛 1920年〜 ある者は、成金の金に委せての横暴が、世の良風美俗を破るといって憤慨した。 【良風美俗】りょうふうびぞく 立派で美しい風習・風俗

私淑

真珠夫人 著 菊池寛 1920年〜 荘田勝平は唐沢男に私淑しているのだ。彼は数十万円を投じて唐沢家の財政上の窮状を救ったのだ。 【私淑】ししゅく 陰ながらその人を師と仰ぎ、模範として学ぶこと 「私も―しておりましたが(ドグラ・マグラ)」 「簑村文學士に…

世道人心

真珠夫人 著 菊池寛 1920年〜 第二の小森幸子事件であると称して、世道人心に及ぼす悪影響を嘆いた。 【世道人心】せどうじんしん 人の世の道徳と、それを守るべき人の心。

赤手

真珠夫人 著 菊池寛 1920年〜 赤手にして一千万円を超ゆる暴富を、二三年のうちに、攫取した面魂が躍如として 【赤手】せきしゅ 手に何も持っていないこと。何の武器も持っていないこと。素手。徒手

浮沈

真珠夫人 著 菊池寛 1920年〜 はしたないとは知りながら、一家の浮沈に係る話なので、応接室に沿う縁側の椅子に 【浮沈】ふちん ・浮いたり沈んだりすること。うきしずみ ・栄えたり衰えたりすること。うきしずみ 「貴女にとれば一生―の瀬戸際でしょう(黒死…

陋劣

真珠夫人 著 菊池寛 1920年〜 卑怯にも陋劣にも、金の力であの清廉な父を苦しめようとするのかしら。 【陋劣】ろうれつ いやしく軽蔑すべきであること、さま。卑怯。下劣。「―な男」 「なおいっそう―な考えだ(文鳥・夢十夜・永日小品)」 「外面道徳の専権…

口銭

真珠夫人 著 菊池寛 1920年〜 今日の縁談なども、纏まればいくらという、口銭が取れる仕事だろう。 【口銭】こうせん 仲介をした手数料

木の下闇

真珠夫人 著 菊池寛 1920年〜 ガスの光が、ほおんじろく湿んでいる公園の木下暗(このしたやみ)を、ベエトーフェンの「月光曲」を聴いた感動を 【木の下闇】このしたやみ 木が茂っていて、その下が暗いこと、その場所 「東照宮前の―に西川の手をひいて(三…

小刀細工

真珠夫人 著 菊池寛 1920年〜 いやにコセコセしていて、人工的な小刀細工が多すぎるじゃありませんか。 【小刀細工】こがたなざいく ・小刀で細工を施すこと ・こせこせとした策略。「―をろうする」

満を引く

真珠夫人 著 菊池寛 1920年〜 模擬店でビールの満を引いている人達の哄笑も、勝平の耳には、彼の金力に対する讃美の声のように聞こえた 【満を引く】まんをひく ・弓を十分に引き絞る ・酒をなみなみとついだ杯をとって、飲む

嬌羞

真珠夫人 著 菊池寛 1920年〜 人々の環視のうちに、微笑とも嬌羞とも付かぬ表情を、湛えた面は、くっきりと皎く輝いていた。 【嬌羞】きょうしゅう 女性のなまめかしい恥じらい。「―を含んだ笑み」

目睫

真珠夫人 著 菊池寛 1920年〜 もう、死期の目睫の間に迫っていることが判った。 【目睫】もくしょう 極めて近いところ。目前。「―に迫った式」 【目睫の間】もくしょうのかん 距離や時間などが極めて近いこと

放胆

真珠夫人 著 菊池寛 1920年〜 彼は運転手の放胆な操縦が、この惨禍の主たる原因であることを、信じたからであった。 【放胆】ほうたん きわめて大胆であること、さま。「―な言動」

婚する

真珠夫人 著 菊池寛 1920年〜 それほど、信一郎は新しく婚した静子に、心も身も与えていたのである。 【婚する】こんする 結婚する。夫婦になる。

隠見

真珠夫人 著 菊池寛 1920年〜 汽車の進むに従って、隠見する相模灘はすすけた銀の如く、底光を帯びたまま澱んでいた。 【隠見】いんけん 見えたり隠れたりすること。見え隠れ。「木々の間に―する家並み」

刎橋

エムブリヲ奇譚 著 山白朝子 メディアファクトリー 2012/3/2 発行 「橋がある。あれは刎橋だ」 【刎橋】はねばし 江戸時代に存在した架橋形式 (参考:http://www.kyoryoshimbun.com/cn4/pg97.html)

鶏口となるも牛後となるなかれ

さようなら、猫 著 井上荒野 光文社 2012/9/20 発行 何度も繰り返してきた口調で「鶏口となるも牛後となるなかれ、だから」と答えた。 【鶏口となるも牛後となるなかれ】けいこうとなるもぎゅうごとなるなかれ 大きな集団にいて人の尻についているよりも、小…

針小棒大

さようなら、猫 著 井上荒野 光文社 2012/9/20 発行 その同僚は、針小棒大に伝えたのである。 【針小棒大】しんしょうぼうだい 些細な事柄を大げさに誇張して言い立てること、そのさま。「―な記事内容」 「―の記事も沢山あったに違いありません(みみずのた…

深情け

ゼラニウムの庭 著 大島真寿美 ポプラ社 2012/9/15 発行 壊してしまうには忍びなかった。深情けだったわね、後になってそう思った 【深情け】ふかなさけ (異性への)情愛の度がすぎること、またその情愛 「―のもののけにとり憑かれて(抒情的恐怖群)」

心奥

ゼラニウムの庭 著 大島真寿美 ポプラ社 2012/9/15 発行 まるで、わたしたちの心奥に、目に見えぬ楔が打たれているかのように 【心奥】しんおう 心の奥、底。「―に秘めた思い」

筍生活

ゼラニウムの庭 著 大島真寿美 ポプラ社 2012/9/15 発行 筍生活(物を売って食いつなぐことをそう呼ぶのだそうだ)はちっとも終わりが来なかった 【筍生活】たけのこ 筍の皮を一枚ずつはいでいくように、家財や衣類など身の回りの物を少しずつ売りながら生活…

日にち薬

ゼラニウムの庭 著 大島真寿美 ポプラ社 2012/9/15 発行 芳しい効果はなかったねえ。手立てがなかった。日にち薬でしょう、って 【日にち薬】 時間の経過によって病を治そうとすること

寿ぐ

ゼラニウムの庭 著 大島真寿美 ポプラ社 2012/9/15 発行 家で働く者皆に祝い膳が振る舞われ、揃って双子の誕生を寿いだという。 【寿ぐ】ことほぐ 喜びや祝いの言葉を述べる 「成就を言祝ぐ民衆(黄色い水着の謎)」 「再会を―いだ(この女)」 「―ぎ奉るの…

松の内

ゼラニウムの庭 著 大島真寿美 ポプラ社 2012/9/15 発行 ちょうど十年前(平成二年)のことだ。元旦の夜に倒れ、松の内に息を引き取った。 【松の内】まつのうち 正月の松飾りをたてておく期間。元旦から7日、もしくは15日まで。注連(しめ)の内 「そう。―…

茫洋

秘密は日記に隠すもの 著 永井するみ 双葉社 2012/7/22 発行 外見は茫洋として牛を思わせ、動作がのろく、反応も鈍い。勉強が大の苦手だった上、 【茫洋】ぼうよう 広々として限りのないさま。広くて見当がつかないさま。「―たる平原」 「昔のことは輪郭を失…

合歓綢繆

桜の実の熟する時 著 島崎藤村 1919年 合歓綢繆を全うせざるもの詩家の常ながら、特に厭世詩家に多きを見て思うところなり。 【合歓綢繆】ごうかんちゅうびゅう 男女が深く愛し合うさま【合歓】ごうかん ・ともに喜び楽しむこと ・男女が共寝すること。同衾 …

鋳掛屋の天秤棒

桜の実の熟する時 著 島崎藤村 1919年 出過ぎて生意気だというところから、「鋳掛屋の天秤棒」という綽名を取っていた。 【鋳掛屋の天秤棒】いかけやのてんびんぼう (鋳掛屋の天秤棒は普通のものより長いことから)でしゃばりな人、またその行為

気焔

桜の実の熟する時 著 島崎藤村 1919年 帰って来ている日には、殊に玉木の小母さんの気焔が高かった。 【気焔】きえん 炎のような盛んな気概。論戦などで見られる威勢のよさ。「―を吐く」

食客

桜の実の熟する時 著 島崎藤村 1919年 玉木さんは食客らしく遠慮勝ちに膝をすすめて、夫婦して並んで食台の周囲に坐った 【食客】しょっかく ・才ある人物を客として抱えておくこと ・居候 「牢屋敷で―をしている浪人で(猫間地獄のわらべ歌)」